【トラン/タイ 15日 AFP】南部トラン県(Trang)の漁民は、船の周りに集まり、絶滅危ぐ種に指定されているジュゴンのことを語り合っては、遠くを見つめるような目になり、そして舌なめずりする。
「おいしんだよねえ!」ひとりが叫びながら、太ももをたたき、にっこりと笑った。
「牛肉よりおいしいよねえ」もうひとりがうなずき、静かな海を眺めやった。国内に生息するわずか250頭のジュゴンの大半が、タイ南部に生息しているのである。
だが彼らがジュゴンの肉を常食していたのは、もう10年も前の話だ。現在では、ジュゴンは食べられるものではなく、保護されるものとなっている。
ジュゴンは、大きなものでは体重400キロ、体長4メートルにもなる。祖先は象の一種と言われており、かつてはタイの海域にも数多く生息していた。
だが、大規模な捕獲や環境破壊により個体数が激減。現在では、観光客の激増や開発が原因で、絶滅の危機に瀕している。
地元で保護活動を進めるPisit Charnsnohさんは語る。
「ジュゴンの未来は相当暗いと言っていいでしょう。問題は山積みされています」
2006年11月に実施された調査によれば、ジュゴンの個体数は、南部アンダマン海(Andaman Sea)に約200頭、タイ湾(Gulf of Thailand)にわずか50頭が確認されただけだという。
ジュゴンの個体数調査は今回が初めてで、過去のデータとの比較はできないとはいえ、海洋生物学者らは、個体数は急激に減少していると口をそろえる。
今回の調査を担当したプーケット島の海洋生物センターでは、トラン県海域に生息する個体数は150頭とみている。同海域では、ジュゴンの主食である海草が今も豊富にあり、開発の手もさほど伸びていないためだ。
だが先ごろ、観光業界は沿岸地帯の埋め立てを決定。ホテルを建設し、大型船の寄港を可能にするとの計画を明らかにしており、ジュゴンの生息環境の破壊が懸念されている。
プーケット海洋生物センターでは、適切な管理が行われなければ、マングローブ湿地などを含むトラン県の繊細な生態系は危機に瀕すると警告を発している。
写真は、インドネシア・ジャカルタ(Jakarta)の水族館でジュゴンを見て驚く少年(2002年9月22日撮影)。(c)AFP/CHOO Youn-Kong
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