【ダナム/カナダ 24日 AFP】氷結したブドウを原料とした「アイスワイン」の産地では、現在収穫期を迎えているが、天候不順でブドウが台無しになる事態がたびたび発生し、生産者らはアイスワイン農園の未来を危ぐしている。

■真冬に収穫されるブドウで作るワイン

 夏の終わりにブドウの収穫期を迎えるフランスやイタリアのブドウ園では、収穫期に雪が積もるとパニックになるが、アイスワインの産地であるカナダでは、冬のさなかに、ウールの帽子をかぶり手袋をはめた人々がしなびたブドウを手で摘んでいる。

 「キャンディーみたいでしょう」と、氷結したブドウを記者にすすめるのは、1980年代から10以上のブドウ園が開かれているケベック州東部のダナム(Dunham)にあるL’Orpailleurワイナリーの共同経営者、Charles-Henri de Coussergues氏。ブドウを口に入れると、口の中にぬくもりを感じ、芳醇な香りが広がった。
「ワインを寝かせる11-12月には、寒気がワインの味を刻々と変化させ、蜂蜜、アプリコット、ライチの風味がプラスされる」

 冬に収穫されるアイスワイン用のブドウは、しぼったあとで、気温がマイナス8度からマイナス12度まで下がる真冬に発酵させる。このときブドウに含まれている水分が氷結し、製造工程でブドウの皮とともに残存し、ワインの甘味を引き上げる要因になっている。

■度重なる天候不順で危ぶまれるワイン生産

 しかしながら、氷結には加減というものがある。氷結がゆるいと、ブドウは腐り、収穫は台無しになる。また、氷結し過ぎていても、ワインへの抽出が不可能になる。

 カナダでは前年、暖冬のためにアイスワイン用のブドウの一部がだめになった。さらに、「遅い冬」のために収穫期が通常より1か月遅い1月にずれこんだが、1月になり気温が急激に下がった。

 先述のde Coussergues氏の農園でも、収穫量は半分に落ち込んだ。同氏は、天候不順が続くことでアイスワインの生産ができなくなる事態になることを危ぐしている。

 カナダ、オーストリア、ドイツは、世界有数のアイスワインの産地である。カナダの年間輸出量は12万リットルほどで、主に日本や台湾、シンガポール、米国に輸出している。まだ「すき間商品」ではあるが、アイスワインの需要は伸びてきているという。

「アイスワインは稀少かつ高価だが、真冬に収穫されたブドウから作られることが人々の興味をそそるようだ。製造工程は、どこか『ロマンチック』で、さらに、『冷たさ』が珍しさを倍加しているのです」と、カナダ最大のワイナリー「イニスキリン(Inniskillin)」のアイスワイン販売責任者は説明する。

 1980年にフランスからカナダに移住したというde Coussergues氏。
「ここでワインを作るといったら、友人たちは仰天した。ケベックがワインの生産に適しているなんて信じようともしないんだ」

 写真は10日、氷結したブドウの味をみるde Coussergues氏。(c)AFP/David BOILY