
【グラース/フランス 28日 AFP】一般受けする香りを大量生産で販売製造する香水メーカーの狙いとは反対に、個性的な香りを求める動きが高まっている。他人とは異なる自分だけの香りを求める、若い世代が出現したのだ。
最近まで、香水メーカーはアラブの王族や、億万長者、映画スターが好むような香水ばかりを作ってきた。香りに関する著書も出版している専門家のアニック・ル・ゲレ(Annick Le Guerer)氏は「近年、香水メーカーは、国や地域に関係無くどんな人々にも広く受け入れられるような、大衆受けする香りを作ってきました。そこに調香師の意向は関係ありませんでした。」と語る。
しかし、個性のある香りの代わりに、一般受けする香りを作りだそうという企業の動きは、調香師の反発を招いた。多くの調香師たちは、独自の香りを追求する顧客の要望に応えるため、各自ブランドを立ち上げ始めたのだ。
リビエラ(Riviera)海岸に位置する香りの都グラース(Grasse)で、AFPの取材に応えた芳香製造の仏国立協会、PRODAROMのHan Paul Bodifee代表は「ここ数年の間に、個性のある香りを求める動きは一部の顧客層の間で大きくなってきました。顧客の要望に応じて、個性的でで高品質な香りを作り出す技術を持ち合わせた調香師たちが、新ビジネスを立ち上げ始めたのです。」とコメントした。
■ 国、性別問わず、個々の好みに合わせ
このような動きは一部の顧客層に限ったものではない。もちろん富裕層もいるが、個性的な香りを求める傾向は、性別・職業・政治志向などを問わず、幅広く存在する。彼ら全員の共通点は、「品質にうるさい」ということである。
「年代も幅広い。幼児から80歳代の老人まで様々だ。」コスメブランドSalon Priveの創始者イザベル・バーデル(Isabelle Burdel)氏はこう語る。Salon Priveは2年前、ここリビエラで創業された。バーデル氏の最年少の顧客は3歳のアラブの王女だと言う。
顧客の国籍も多彩だ。主要な顧客層は欧州及び北米だが、アラブ諸国や東欧、北アフリカ、中南米でも人気が高まりつつある。最近ではインドを始めとしたアジアでも同様の傾向にある。
「大衆向けの香水市場で合成成分が使用され、オーダーメードの香水価格が高騰する原因は、高価な天然成分にある。」とバーデル氏は語る。
■ オーダーメードには時間とお金が必要
「オーダーメードの香水には、お金や時間に関する糸目をつけることは不可能だ。」今日の若手有望調香師の1人、パリを拠点に活動するフランシス・クルクジャン(Francis Kurkdjian)氏は語る。6か月間もの時間を費やしてクルジャン氏が製造した香水の値段は8千ユーロ(約125万円)にもなるという。
しかしこの値段は、世界のトップブランド、ゲラン(Guerlain)やジャン パトゥ(Jean Patou)、カルティエ(Cartier)に比べれば、まだまだ手頃なものだという。
バーデル氏たちが制作する香水の中でも、限定生産されるものには1本につき30~50もの成分が使用され、一度に20本程度しか製造することができない。先着順で発売されるこの香水の値段は、小瓶一本につき600ユーロ(約9万円)。これでもクルクジャン氏が作る1本125万円の香水に比べれば安いものである。
今年、香水愛好者にとって、一生に一度しかないと言えるチャンスがめぐってきた。フランス王妃マリー・アントワネット(Marie-Antoinette)が使用していたとされる香水が復元されたのだ。クルジャン氏は18ヶ月もの時を費やして、18世紀の書物を参考に入念な研究調査を行った。
クリスタル製のフラスコ商品は1本8000ユーロ(約125万円)で10本のみ、小瓶に入ったものは1本350ユーロ(約5万5千円)で100本のみが販売され、再生産の予定はないという。
写真は19日、カンヌで披露されたIsabelle Burdel氏の最新作。(c)AFP/VALERY HACHE
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