【バンコク/タイ 25日 AFP】タイの農村地帯では、いまだに多くの人々が電気のない生活を強いられている。貧しい子どもたちは、食事や本を買うのもままならない毎日を送っている。
そんな彼らが、もうすぐ最新式ノートパソコンを使えるようになるかもしれない。
タイ政府は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)がこのほど立ち上げた「1人の子どもに1台のノートパソコンを(One Laptop per Child、OLPC)」と題したプロジェクトを通じ、100万台のノートパソコンを注文したいとしている。
同プロジェクトは、MITが開発した周辺機器を一切必要としない画期的なパソコン「XO-1」を、地方の小学生らに無料で配布するというものだ。
■ 安くて耐久性の高いノートPC
このノートPC「XO-1」は、学者らや企業が設計段階から、ファンキーで耐久性が高く、価格はたった100ドル(約1万円)に抑えるという前提で開発を行った。
低価格ながら128メガバイトのハードドライブを搭載し、ワイヤレスでインターネットに接続できる。カメラも搭載しており、生徒たちが写真やビデオを撮ったり、ウェブ画像を楽しめるようになっている。大量データ保存以外なら通常のパソコンが持つほとんどすべての機能を備えるという。
動力源は電池か小型の発電装置を予定。OLPCのウェブサイトによると、システムを簡素化し、従来型のノートパソコン用ディスプレーを利用することで、価格の引き下げを実現するとともに電力消費を80%カットできたという。
開発責任者でプロジェクトを率いるニコラス・ネグロポンテ(Nicholas Negroponte)教授は、「開発途上国の子どもたちだって、最新のテクノロジーを必要としています。とりわけ、頑丈なハードウエアと革新的なソフトウエアが必要です」と語る。12月初め、プロジェクトのため訪れたバンコク(Bangkok)で、「(XO-1は)すべての子どもたちにとって、個人で相互作用的、冒険的に“学ぶことを学ぶ”のに、最適なツールなのです」と述べた。
■ 6か国に配布予定
プロジェクト最初のパソコン配布は、タイのほかアルゼンチン、ブラジル、ナイジェリア、リビアの計5か国の予定。2007年半ばの生産開始を見込んでいる。
タイ国立電子コンピューター技術センター(National Electronics and Computer Technology Center)のSanya Klongnaivai研究員は、AFPの取材に対し、「すでにいくつかサンプル用のマシンを得て、地方の農村地帯で子どもたちが試験的に使用しています」「わが国など第3世界の子どもたちにとっては、とてもわくわくする学習ツールだと思います」と語った。
■ クーデターで配布中断の恐れも
だが、タイでは一時、子どもたちの手元までコンピューターが届かないのではと危ぶまれた。というのも、プロジェクトへの参加は9月の無血クーデターで政権の座を追われたタクシン・シナワット(Thaksin Shinawatra)前首相が主導していたからだ。クーデター後の政権は予算が限られていることもあり、教育省が実現を疑問視する一幕もあった。
ウィチット(Wijit Srisa-arn)教育相は今月初め、「プロジェクトは何も急ぎのものではないし、1年以内に実施するとした教育改革政策にも含まれていない。改革ではまず、教師、生徒の両面で教育の質の向上をめざす」と述べている。
一方、情報技術関連当局はプロジェクトの推進を主張する。
情報通信技術省のVissanu Neeyoo報道官は、「OLPCのプログラムを入念に査定している段階」だとして、「試験的にまず数校で導入する予定だ。来年初頭には、はっきりしたガイドラインを得たいと思っている」とAFPに語った。
■ インタネットアクセスに潜む危険性も指摘
OLPCプロジェクトは大勢から歓迎されているものの、判断を保留する人々もいる。子どもたちがウェブ画像や監視のないインターネットアクセスなどを通じて、性的な宣伝の被害になると危惧(きぐ)する声もある。
国際NGO「ECPAT/ストップ子ども買春の会」は、19日に発表した報告書の中で、OLPCの運営側に対し、人々に危険を周知することが大事だとして、「子ども1人に1台のパソコンを配布するという活動にあたっては、教師や生徒たちが情報技術を介した宣伝行為の被害受けないよう、身を守るすべを身につけさせるカリキュラムを組み込んでいなければならない」と警告している。
写真は、2005年に発表されたOLPCの端末。(c)AFP/ERIC FEFERBERG