【7月31日 AFP】ある種の血圧降下剤には、高齢者の認知症の進行をわずかに抑制する効果があり、認知力をわずかに高める効果もあるかもしれないとの研究論文が26日、英医師会雑誌(BMJ)のオンライン医学誌「BMJ Open」に発表された。

 アイルランド・コーク(Cork)の医師らは、カナダ・オンタリオ(Ontario)州にある2か所の大学病院の記憶外来で行われた先行研究のデータを分析した。

 同研究では、認知症の一種のアルツハイマー病と診断された平均年齢70代後半の患者361人を対象に、1999年から2010年までの期間、2種類の標準的なテストを使用して認知能力の追跡調査を行った。うち85人が、調査に登録した時点で、「CACE-I」の名でよく知られる抗高血圧薬、中枢作用性アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を以前から服用していた。

 アイルランドの研究チームの分析によると、この85人の患者には、CACE-Iを服用していない他の患者に比べて、認知症の進行速度がわずかながら減速する傾向がみられた。

 さらに研究チームは、患者30人に新たにCACE-Iを処方し、投薬治療期間の最初の6か月間に認知力の評価を行う小規模な独自調査も実施した。その結果、CACE-Iを服用していない患者に比べて、服用患者らの認知能力がわずかに向上したことがわかった。こうした向上傾向が確認されたのは今回が初めて。

「この差異は小さく、臨床的有意性も不明確だが、長年にわたって持続させれば、複合作用によって有意な臨床効果が得られるかもしれない」と論文は述べている。

 ただし、認知力向上の傾向が生じた原因は不明であり、副作用の可能性を考慮すると、CACE-Iの無制限の使用は控えるべきだと、研究チームは注意を促している。

 2009年に米国医師会(American Medical Association)の内科専門誌「アーカイブス・オブ・インターナル・メディシン(Archives of Internal Medicine)」に発表された研究結果では、認知力の減退をさらに大幅かつ長期に抑制する効果がCACE-Iにあることが報告されている。この研究では、患者1000人以上を対象とした比較調査で、CACE-Iの服用期間1年当たり、認知力の減退が65%抑制される可能性が指摘された。(c)AFP