【7月9日 AFP】体外受精(IVF)に掛かる費用は、医療施設の設備簡易化により200ユーロ(約2万6000円)程度に抑えられることが分かったという報告が8日、英ロンドン(London)で開かれた欧州ヒト生殖学会(European Society of Human Reproduction and EmbryologyESHRE)の年次大会で発表された。欧米で一般的なIVF治療費の10~15%に当たるといい、開発途上国で不妊に悩む数百万人の人々に希望を与える報告だ。

 ベルギーのチームが考案した体外受精施設は、胚培養に使用される「CO2インキュベーター」や空気清浄装置などの特別なシステムの代わりに、2本のチューブで構成されるシンプルなシステムを使用したもので、典型的な施設に比べ、規模が小さい。試験は、少なくとも8個の卵子が受精可能な36歳未満の患者を対象に、ベルギー国内で行われた。

 低コストな体外受精治療法を従来の治療法と比較したところ、胚の質や妊娠成功率は同程度であることが分かった。これまでに低コストの体外受精により12人の健康な赤ちゃんが誕生している。

 ヘンク生殖技術研究所(Genk Institute for Fertility Technology)のElke Klerkx氏は「体外受精の他に不妊治療の方法がない場合、開発途上国向けに考案された簡易培養システムが、手ごろな値段で成功する機会を提供できるということを証明できた」と述べた。

 先進国における最高水準の体外受精システムの導入コストは150万~300万ユーロ(約1億9500万~3億9000万円)。一方、低コストの体外受精システムの導入に掛かるのは30万ユーロ(約3900万円)未満とみられる。

 同研究所は11月までに低コストの体外受精センターの建設を完了し、開発途上国の専門医院に向けた研修の提供を開始する計画だ。

 1978年に英国で世界初の体外受精児が誕生して以来、これまでに体外受精によって生まれた赤ちゃんは500万人を超える。一方、開発途上国では高額の治療費が障害となり、体外受精を受けることのできる人は限られている。また途上国では、不妊女性が汚名を着せられたり、虐待を受けたり排斥されたりすることが多い。

 Klerkx氏は「不妊治療は恐らく開発途上国において最も軽視された医療問題で、世界保健機関(WHO)によると200万組超のカップルが影響を受けている」と指摘した。(c)AFP