【6月9日 AFP】中国国民は生活が豊かになるに伴い、がんや肥満、公害や都市での暮らしによる新たな健康問題に直面しつつあるとする研究論文が8日、英医学専門誌「ランセット(Lancet)」に掲載された。

 中国疾病予防抑制センター(Chinese Center for Disease Control and Prevention)、北京協和医院(Peking Union Medical College)、米ワシントン大学(University of Washington)保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and EvaluationIHME)などが、1990~2010年のデータに基づき、中国の急速な発展と都市化が人間に及ぼした影響を研究した。

 90年代の中国の健康事情は、ベトナムやイラクといった発展途上国に酷似していたが、現在は米国や英国、オーストラリアなどに近づいているという。

 中でも、出生率と子供の死亡率は共に激減し、出生時平均余命が延びている。1990年に69.3歳だった平均余命は2010年には75.7歳となり、主要20か国・地域(G20)中12位に上昇した。一方、死亡する子供は1990年の100万人から、2010年には21万3000人と大幅に減った。

 しかし寿命が延び、人々が都市に住むようになって新たな健康問題も浮上している。現在の中国で見られる主な健康障害は、脳卒中や虚血性心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰痛、交通事故による負傷などだ。また喫煙や食習慣、高血圧、大気汚染や室内空気汚染なども主な危険因子となっている。論文では、都市化や所得の増加、高齢化などによって非伝染性疾患が急速に増えるとともに、健康問題の焦点が慢性障害に移行していると指摘している。

 論文はまた中国に特徴的な傾向として、早期死亡の原因上位15位までに肺がん、肝臓がん、胃がん、食道がん、直腸がんの5つのがんが入っていることを挙げている。(c)AFP