【6月4日 AFP】中米エルサルバドルで、慢性疾患により母体に危険が及ぶ危険性があるとして、申請した中絶の特例措置が最高裁に退けられたベアトリスさん(仮名、22)が3日、首都サンサルバドル(San Salvador)市内の病院で帝王切開手術を受けた。生まれた女児は数時間後に死亡した。同国では人工妊娠中絶が禁じられている。

 マリア・イサベル・ロドリゲス(Maria Isabel Rodriguez)保健相によると、無脳症で出産直後に死亡する可能性が高いとされていた女児は、出産から5時間後に死亡した。ベアトリスさんの健康状態は良好だという。

 ベアトリスさんは免疫低下を引き起こす「全身性エリテマトーデス」と診断されており、胎児も出産後に死亡する可能性が高いと言われていた。このため母体の安全を守るために特例での中絶許可を要請していたが、エルサルバドルの最高裁判所は、胎児より母親の権利が優先されることはないとして、ベアトリスさんの要請を退けた。ただ、ロドリゲス保健相が「医療介入は堕胎ではなく分娩介助にあたる」として特別許可を出し、妊娠26週での帝王切開手術が決まった。

 エルサルバドルの保健当局は、ベアトリスさんの件に関して4日に声明を発表する予定。

 この問題は世界的にも大きな注目を集め、コスタリカにある米州人権裁判所(Inter-American Court of Human Rights)はエルサルバドル政府に対し、妊娠中だったベアトリスさんの母体保護措置をとるよう求めていた。また国際人権団体のアムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)も、ベアトリスさんの中絶要請を却下した最高裁判所の判断を残酷で非人道的だと非難している。(c)AFP/Carlos Mario Marquez