【5月21日 AFP】世界保健機関(World Health OrganizationWHO)のマーガレット・チャン(Margaret Chan)事務局長は20日、中国でヒトへの感染が拡大している鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)について、今後の感染状況の推移を予測するのは不可能だとの見解を明らかにした。ヒトに感染するようになった経緯が現時点で解明されていないことがその理由だ。

 スイス・ジュネーブ(Geneva)で開幕した第66回世界保健機関年次総会(World Health Assembly)で約3000人の出席者を前に演説した事務局長は、「インフルエンザ・ウイルスは常に変異を続けている。感染がどのように拡大するかを予測できる者はいない」と言明した。しかし一方で、「ヒトに感染するようになった経緯は完全には明らかになっていないが、(中国の)家禽(かきん)市場を閉鎖して以来、新たな感染者の発生は大幅に減少している」と指摘。さらに、「現在、ヒトからヒトへの感染が起こる可能性ははほとんどないとみている」と付け加えた。

 最新の公式データによると、今年3月に中国で初めて人への感染が確認されて以来、同国で報告されたH7N9型鳥インフルエンザの感染者は130人、うち死者は35人に上っている。

 事務局長はまた、中東で昨年初めて確認されて以来、感染が拡大しているSARS様の新型コロナウイルスについて、「現在までに41人が感染し、うち20人が死亡している。感染者の数は少ないが、限定的にヒトからヒトへの感染が発生しており、医療従事者もヒトから感染している」と述べた。

「これら2つの新しいウイルスは、新興感染症や流行の可能性がある病気の脅威が絶えず存在することを、私たちに再認識させるものだ。微生物の世界では、持続的な変異と適応は生き残るためのメカニズム。常に私たちを驚かせる」という。(c)AFP