【5月9日 AFP】てんかん患者の脳に埋め込む極小の機器で、てんかん発作の始まりを予測することに世界で初めて成功したと、豪研究チームが2日の英医学専門誌「ランセット・ニューロロジー(Lancet Neurology)」に発表した。

 てんかん患者の命を救う可能性を持つこの機器は、脳表面の電気的活動を監視する電極と連携して機能する。電極は、胸部の皮膚の下に埋め込まれたもう1つの機器に接続されており、この機器からデータが無線で携帯端末に送信される。携帯端末では、発作が起きる確率が算出される。

 携帯端末では、発作が起きる危険性が高い場合は「赤」、中程度の場合は「白」、低い場合は「青」の光が点灯するようになっている。

■てんかん患者の「生活の質」向上に光

 論文の主執筆者、豪メルボルン大学(University of Melbourne)のマーク・クック(Mark Cook)氏は「いつ発作が起きる可能性があるかを把握できれば、てんかん患者のクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)と自立性が目覚ましく向上する可能性があるだけでなく、車の運転や水泳などの危険な状況も回避できる」と声明で述べている。さらに患者は、発作を抑える薬を継続的に服用するのではなく、発作が始まる前にだけ服用するという自由を得られるかもしれない。

 てんかんの発作は、脳細胞群の過剰放電に起因するもので、最大のリスクは患者が意識を失った際に倒れてけがをすることだ。

 研究チームは、15人の患者を対象にして埋め込み機器の試験を行い、感染症や機器の体内移動などを含む副作用が比較的少ないことを記録した。試験の結果、対象患者の中の11人で、65%を超える「高い警告」感度レベルで発作が正しく予測されたという。

 発作の警告が発せられる時間間隔に大きなばらつきが見られる点は、今後のさらなる研究が必要としながらも、研究チームは「今回の研究では、小規模な概念実証の段階だが、発作の予測が可能であることが明らかになり、てんかん患者の新たな治療方針とさらなる自主性の向上につながる可能性が示された」と述べている。(c)AFP