【4月12日 AFP】手術で手足などを失った人の多くは、「幻肢(げんし)」と呼ばれる、失った手足がまだ存在するかのような感覚を経験する。だがスウェーデンの研究者らが11日の米神経科学専門誌「ジャーナル・オブ・コグニティブ・ニューロサイエンス(Journal of Cognitive Neuroscience)」に発表した研究論文によると、健常者でもこの奇妙な感覚を経験することが可能だという。

 論文の主執筆者で、スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)のアービット・グーテルスタム(Arvid Guterstam)氏は、「身体的自己の経験を形成するという点では、脳にとって、実際に手が見えることの重要度は著しく低いことがわれわれの研究結果によって明らかになった」と語る。

 幻肢は痛みを伴って患者を苦しめる場合があり、薬でも緩和できない。これは幻肢の感覚が本来、失われた手足がまだそこに存在するかのように想定する脳の幻覚によるものだからだ。

 グーテルスタム氏によると、同氏の研究チームは今回の研究成果が、四肢切断患者の幻肢痛(げんしつう)に関する今後の研究に役立つことを期待しているという。

 研究チームは、2本の腕と手を持つボランティアの参加者に対して、「見えない手」があるという感覚を経験できるような錯覚を生じさせる11種類の実験を行った。

 実験では、参加者はテーブルにつき、右手を仕切りの陰に隠して自分から見えないようにする。実験者は、参加者の右手に筆で触れつつ、参加者の見えるところでは、何もない空中で別の筆を全く同じ動作で動かす。

 グーテルスタム氏によると「大半の参加者は1分もたたないうちに、触られているという感覚を、筆が動いているのが見える何もない空間の領域に転送して、見えない手がその場所にあるように感じるようになる」という。「木片などの物体を自身の手のように感じることはないのは、これまでの研究で明らかになっていたので、脳が見えない手を体の一部として受け入れることを発見して非常に驚いた」

 また別の実験では、見えない手が「占めている」何もない空間を、実験者がナイフで突き刺す動きを行い、脅威を感じることによって生じる参加者の手のひらの発汗反応を測定した。実験の結果、参加者のストレス反応は、見えない手の錯覚が生じている場合は高くなり、生じていない場合はまったく見られなかった。

 さらに別の実験では、参加者に目を閉じて、左手で右手を指さすように指示した。参加者は、見えない手の錯覚をしばらくの間経験した後では、本物の右手ではなく、見えない手のある場所を指さした。

 さらに、脳活動の測定では、見えない手の錯覚によって、通常は目の前で本物の右手に触れられた場合に活性化する脳の部位で、脳活動の増加が起きていることが確認された。

 参加者234人の74%が、実験中に幻肢を経験したとグーテルスタム氏は述べている。(c)AFP