【3月24日 AFP】英国の一般開業医の約97%が患者に「気休めの薬」を出しており、しかも75%が「少なくとも週1回」はそうした処方を行っていることが調査結果で明らかになった。

 21日に発表されたオックスフォード大学(Oxford University)とサウサンプトン大学(University of Southampton)の合同チームが一般開業医783人に行ったインターネット調査によると、医師の大多数が偽薬や有効性の証明されていない治療法を用いたことがあると回答した。

 これには、有効成分を少量に抑えた薬や、問題となっている症状に対する有効性が証明されていない栄養補助食品(サプリメント)、ウイルス感染が疑われる場合にもかかわらず抗生物質を処方することなどが挙げられている。医師のうち約12%は、砂糖を固めた錠剤や食塩水など有効成分がまったく入っていない「正真正銘の偽薬」を使ってさえいた。

 また「気休めの薬」を使うことは「絶対に認められない」と答えたのは33%だけで、66%が「状況によっては許せる」と答えた。さらに必要がないのに健康診断や血液検査を行うなど不謹慎とされる措置も「場合によっては許される」と84%の医師が答えた。

 そうした「気休め」の薬や措置の理由としては、患者から治療を強くせがまれた場合や患者を安心させるために「心理的な治療効果を与えるため」だと回答した。

 ただし、90%以上の医師が、患者との信頼関係が脅かされる場合には「気休め」の措置に反対しており、また80%以上の医師が患者を「だます」ことになる場合は反対だと回答した。

 臨床での偽薬の使用は英国の医療監督機関である英医事委員会(General Medical CouncilGMC)の倫理指針や英国医師会(British Medical AssociationBMA)の方針にも反している。

 しかし、論文の共著者であるオックスフォード大のジェレミー・ハウイック(Jeremy Howick)氏はこの調査結果について、「(気休めの薬や措置は)医師が患者をだましていることには当たらない。英国で広く偽薬が使われていることが示されたが、医師たちはそれが患者の助けになると考えてやっている」と述べている。さらに「気休め」の措置を医師らが広く支持しているという証拠が示されたことから、倫理指針を見直すべきだとも述べた。

 米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に発表された同研究によると、こうした措置は英国以外の国でも同程度に行われているという。(c)AFP