【1月11日 AFP】インスリンの働きを分子レベルで位置付ける画期的な研究結果が、10日の米科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。インスリン注射の要らない糖尿病治療が可能になるかもしれないという。

 米豪の合同研究チームは、ホルモンの1種であるインスリンが細胞の表面に結合し、血液からグルコースをエネルギーとして取り込む仕組みを分子レベルで詳細に提示することに初めて成功した。

 研究を主導したマイク・ローレンス(Mike Lawrence)氏によると今回の研究では、インスリンと細胞表面のインスリン受容体との「分子レベルでの握手」が解明された。同氏は「インスリンとその受容体の双方が相互に作用しながら再構成を行っている。インスリンの一部が開き、受容体の主要な部分が移動してインスリンに働きかけようとする」と説明し、「珍しい」結合方法だと表現している。

 ローレンス氏によれば、今まではインスリンがどのように受容体に結合するのかが分かっていなかったため、新しい種類のインスリンの開発には限界があった。しかし、今回の発見が「注射以外の治療法に道を開く新種のインスリンや、効果の向上や長期化によって頻繁に注射する必要がなくなるインスリンの開発につながるのではないか」(同氏)という。

 またローレンス氏は、現在より安定した冷蔵保存の必要ないインスリンの開発も可能になるため、発展途上国での糖尿病治療をも変えるだろうと語った。インスリンが関与するがんやアルツハイマー病といった疾患の治療にも応用できるという。(c)AFP/Amy Coopes