【12月20日 AFP】肥満の原因菌かもしれないバクテリア(細菌)を特定したとする論文が、上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)の研究チームにより国際微生物生態学会(International Society for Microbial Ecology)の学会誌で発表された。食生活を通じて体内の微生物をコントロールすることにより、肥満と戦うことができるかもしれないという。

 この細菌は「エンテロバクター」と呼ばれる種で、研究に協力した病的な肥満に苦しむ患者の腸内で大量に発見されたことから、肥満との関連が疑われるようになった。

 そこで研究チームは、高脂肪の餌を与えても太らないほどの肥満耐性を持つように育てたマウスに、エンテロバクターを最大10週間にわたり注入し、同時に栄養価の高い餌を与える実験を行った。すると、マウスの体重は大幅に増加したという。この実験結果は、細菌が人間の体内で「肥満の発生原因になっている可能性がある」ことを示すものだと論文は述べている。

 人間の患者1人を対象に行った実験では、全粒穀物、中国伝統の薬膳料理、プレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維など)を中心とした食生活を9週間続けたところ、体重は30キロ以上減り、腸内のエンテロバクターの数は「検知不能」なレベルまで減少したという。

 今回の論文執筆者の1人、趙立平(Zhao Liping)氏の過去の研究について米科学誌サイエンス(Science)が今年掲載していた記事によると、同氏は腸内細菌のバランスを調整するためにニガウリなどを発酵させたプロバイオティック食品中心の食生活に切り替えたところ、体重が2年で20キロ落ちたという。サイエンス誌は、趙氏が腸内細菌と肥満の関係について行った研究は、腸は「健康作りの基本」という中国で昔から信じられている考え方に基づいたものだと説明している。

 研究チームは今回の論文で、さらに研究を重ねて「さまざまな地域の人々が持つ同じような肥満原因菌を特定したい」と述べている。(c)AFP