【11月3日 AFP】有機食品のほうが本当に健康に良く、高い値段に見合う価値があるのか──米国で盛んに議論されてきたこの問いへの答えは、過去40年にわたる研究を経た今も定かではない。

 米スタンフォード大(Stanford University)の研究チームは今年9月、過去40年間に行われた237の研究事例について再検討した結果、有機食品は従来食品より残留農薬は少ないが、栄養価は変わらないことが分かったと発表し、この議論が蒸し返された。同研究は肉についても、有機飼育されたもののほうが健康に良いとは確認できなかったとしている。

 しかし、英ニューカッスル大(Newcastle University)のチームは2011年、スタンフォード大が用いたものと同じ237の研究事例から、異なる結論を導き出している。チームは非遺伝子組み換え食品や無農薬作物は特にビタミンCなどの栄養を多く含んでいると結論したが、この研究結果はあまり注目を浴びることはなかった。

 こうして決定的な結論を欠いたまま、この論争は最近になり興味深い進展を遂げた。

■米小児科学会「有機にこだわる必要ない」

 米国小児科学会(American Academy of PediatricsAAP)は前月22日、有機食品のほうが健康に良いと証明した研究はこれまでにないとした上で、高価な有機食品にこだわって健康に良い生鮮食品の全体的な摂取量が減るよりも、有機・無機にかかわらず子供にはフルーツや野菜、全粒穀物、低脂肪または無脂肪の乳製品を多く与えるべきだとする報告書を発表した。ただしこの中でも、有機食品のほうが残留農薬量が少なく、有機飼育牛肉のほうが抗生物質耐性菌が少ないことが指摘されている。

 米農務省の栄養学者デービッド・ヘイトウィッツ(David Haytowitz)氏は、従来食品と有機食品の比較は複雑で難しいと強調している。作物の栄養価には育成場所や管理法など、さまざまな要素が影響するため、正確な比較を行うには有機作物と従来作物を隣り合わせに植えつつ、相互汚染が起こらないような実験環境を用意しなければいけないという。

■栄養価の議論は「的外れ」との指摘も

 だが、非営利団体「公益科学センター(Center for Science in the Public InterestCSPI)」の主任栄養学者デービッド・シャルト(David Schardt)氏は、このような議論は的外れだと言う。多くの人が有機食品を選ぶようになったのは、食品に含まれる農薬や化学物質を避けるためであって、栄養面でのメリットが理由ではないと同氏は指摘する。

 これには有機製品取引協会(Organic Trade Association)のクリスティーン・ブッシュウェー(Christine Bushway)会長も同意する。「従来食品に含まれる残留農薬や有害物質が数値的には安全なレベルだとしても、有機食品を選ぶのは子供のいる家庭や妊婦にとって理にかなった行為。(スタンフォード大の)報告によると有機食品のほうが残留農薬は30%少ない。消費者が気にしているのはそこなのです」

 米国の有機食品市場の規模は310億ドル(約2兆5000億円)に達し、毎年10%の割合で成長を続けている。(c)AFP/Jean-Louis Santini