【9月25日 AFP】世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は24日、2003年に世界で800人以上が死亡したSARSSevere Acute Respiratory Syndrome、重症急性呼吸器症候群)に似た呼吸器の感染症が発生したと発表した。

 WHOによると、カタール人男性(49)がサウジアラビアに行った後の今月3日に急性の呼吸器感染症と腎不全を発症した。この男性は7日にカタールの首都ドーハ(Doha)の病院の集中治療室に入り、11日に救急輸送機で英国の病院に運ばれた。

 またWHOは、今年に入ってサウジアラビア人男性1人(60)が、カタール人男性が感染していたのとほぼ同じウイルスに感染して死亡したとしている。サウジアラビア保健省は、英国に運ばれたカタール人男性を含めサウジアラビアにいたことのある3人がこの病気と診断され、うち2人が死亡したと明らかにした。

 WHOは、この病気はコロナウイルスの1種によって引き起こされるが、2003年に中国で猛威を振るい世界で800人以上が死亡したSARSではないとしている。
 
 WHOのグレゴリー・ハートル(Gregory Hartl)報道官は、「新しい患者が発生したとは聞いていない。このウイルスがどのように拡大したのか、どのように感染するのかも分かっていない。情報を収集しているところだ」と述べた。

 来月にはイスラム教の大巡礼「ハッジ(hajj)」で300万人近くのイスラム教徒がサウジアラビアの聖地メッカ(Mecca)を訪れると予想されているが、WHOは渡航制限を勧めてはいない。

 英政府の感染症対策部局HPAHealth Protection Agency)は、このウイルスはこれまでに人体から見つかっていたどのウイルスとも異なっているが、カタールやサウジアラビアで感染者と接触した医療関係者を含めてこのウイルスによる発症者は出ていないため、SARSほど感染力は強くないとみている。(c)AFP/James Pheby