【9月13日 AFP】ヒト胚性幹細胞(ES細胞)を使って耳の神経細胞を作り、耳の聞こえないスナネズミの聴覚を回復することに成功したと、英シェフィールド大学(University of Sheffield)の研究チームが12日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

 マルセロ・リボルタ(Marcelo Rivolta)氏率いるチームは、スナネズミに化学物質を投与し、「ラセン神経節細胞(SGN)」という耳の神経細胞を働かなくさせた。SGNは、耳の中に入った音によって震える有毛細胞の振動を電気信号に変換する細胞で、損傷すると音を聞くことはできなくなる。

 次に研究チームは、ES細胞を血清溶液の中で「耳前駆細胞」に変化させ、スナネズミの耳に移植した。10週間後、音に対する脳の反応を基にスナネズミの聴力を計測したところ、移植前と比べ平均46%の回復が確認された。聴き取り可能な音量の平均は50デシベルで、静かな環境で人が会話した場合と同程度だという。中には、ほぼ完全に聴力を回復した個体もあったという。

 人間に適用するにはまだ越えなければならないハードルが多いものの、将来的には人工内耳と併用して聴覚障害の治療に活用できるのではないかとリボルタ氏らは期待している。(c)AFP