【8月10日 AFP】ベトナム中部のダナン空港(Danang Airport)で9日、ベトナム戦争中に米軍が散布した枯れ葉剤、通称「エージェント・オレンジ(Agent Orange)」の汚染除去作業が始まった。米越両政府が共同で実施するもので、汚染された土壌を高温に熱してダイオキシンを無害な成分に分解する技術も活用する。費用は4300万ドル(約33億8000万円)。

 かつて米空軍基地だったダナン空港周辺では多くの人が先天性の障害やがんなどの病気に苦しみ、住民らは以前から枯れ葉剤が原因だと主張してきた。戦争終結から数十年を経て、ようやく枯れ葉剤の除去作業開始という歴史的な日を迎えた。

 米軍の枯れ葉剤散布は、ベトナム南部の密林地帯に潜む南ベトナム解放民族戦線の兵士から身を隠す木々と食糧を奪うことが目的だった。当時、ダナン空軍基地は米軍の枯れ葉剤散布作戦「ランチハンド作戦(Operation Ranch Hand)」の拠点で、枯れ葉剤8000万リットルの大半がここで混合、貯蔵され、軍用機に積み込まれた。

 ダナン市に住むグエン・ティ・ビン(Nguyen Thi Binh)さん(78)はAFPに「戦時中は滑走路のすぐそばに住んでいて、異臭のため口を覆わなければならないような夜もあった」と話した。

 ビンさんの5人の子供のうち3人は重度の精神・身体障害がある。ビンさんは子どもの障害は前世で犯した罪のせいだとずっと思っていたが、今では自分と亡き夫がダイオキシンにさらされたのが原因かもしれないと考えるようになったという。ビンさんの成人した娘たちは、取材中も幼児のようにビンさんの周りをはい回っていた。だが、米政府はいまだにダイオキシンと健康被害の因果関係は明らかになっていないとしている。

 枯れ葉剤除去プロジェクトの背景には、中国が南シナ海における領有権の主張を強めていることを受け、米越両国が接近していることがある。(c)AFP/Cat Barton