【8月2日 AFP】がん再発の原因となるとされる「がん幹細胞」が存在する証拠を示す3つの研究結果が2日、英科学誌ネイチャー(Nature)と米サイエンス(Science)に発表された。がん幹細胞の存在をめぐってはここ10年ほど研究者の間で議論が分かれてきたが、今回の発見によって新たな治療薬が開発できると研究者らは期待している。

 3つの研究はいずれもマウスを使って実施された。このうち、腸がんに関する研究をサイエンス誌に発表したオランダ・ユトレヒト大学医療センター(University Medical Center Utrecht)研究チームのHugo Snippert氏はAFPの取材に、これら3つの研究成果によって、がん細胞に異なる機能を持った階層があることがはっきりと示されたと説明した。

■がん細胞の「工場」

 中でも「がん幹細胞」は、がん細胞を作り出す工場の役割を担っているという。

 幹細胞は体内のさまざまな組織の元になる若い細胞で、再生医療で注目されている。だが今回、Snippert氏らの研究では、健康な幹細胞が変異して腫瘍の元になる「起始細胞」を生み出すことが分かった。この腫瘍にも幹細胞が含まれており、がん細胞をさらに増殖させるのだという。

 Snippert氏によれば、がん幹細胞は正常の幹細胞と非常によく似ているため、従来の治療法では正常な幹細胞まで損傷してしまう可能性が高い。したがって今後、がん幹細胞の特徴を把握し、これにターゲットを絞った新薬の開発を行う必要があるという。

 一方、完治の望めない脳腫瘍を対象とした米研究チームは、化学療法の後に新しい腫瘍が発生する源となっていると思われる細胞を発見したと発表。「がん幹細胞が存在する証拠」だと述べている。

 また、ネイチャー誌に掲載されたベルギーと英国の合同チームの研究では、皮膚がんの中から幹細胞と似た特徴を持つ腫瘍細胞の亜集団が見つかったという。

 ネイチャー誌は声明で、「これらの研究を合わせて考えると、がん幹細胞に相当する細胞が存在していることを示す証拠となる」と述べている。(c)AFP/Mariette le Roux