【7月20日 AFP】過去30年にわたる「セーフセックス(安全な性行為)」の呼び掛けは、男性同性愛者間において後天性免疫不全症候群(エイズ、AIDS)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染予防に役立っていないと警告する論文が20日、英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に掲載された。
 
 21日に米ワシントンD.C.で開幕する国際エイズ会議(International AIDS Conference)を前に発表された論文は、世界のHIV対策が全体としては進歩している点を認めつつ、男性間性交渉者(MSMMen who have Sex with Men)における感染拡大は「2012年時点で依然、抑制できていない」と指摘。「対策を強化し、生物学・疫学に基づいた新戦略と、MSMを支援し構造的リスクを減らすよう努力を結集する必要がある」と警告している。

 研究チームによると、コンドームを使わない無防備なセックスにおいては膣性交より、肛門性交の方がはるかにHIV感染リスクが高いという生物学的事実があるという。また、MSMには同性愛者だけでなく異性愛者も含まれるが、肛門性交を行った場合に受身側が感染する確率は男女とも1.4%で、これは膣性交による感染率の18倍だ。

 論文によれば男性同性愛者間では、密接なネットワークとカジュアルなセックス習慣によってHIV感染が急速に広がりやすい。しかし、同性愛者の性習慣を変えようという試みは空回りしている。

 研究を率いたジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院(Johns. Hopkins Bloomberg School of Public Health)のクリス・ベイラー(Chris Beyrer)教授は、中でも「カジュアルな性関係が、MSM間の感染拡大に大きな勢いを与えている」と警告する。「無防備な肛門性交でも、カジュアルな関係ではなく長期的な関係の中で行われるならば、HIV感染率は29~51%下がるだろう」

 MSM間の感染抑制には、コンドームの使用を奨励するだけでなく、多様な戦略が必要だと論文は指摘している。この中には、例えば暴露前予防投薬(PrEP)と呼ばれている対策がある。これは、抗レトロウイルス薬の使用によってHIV感染男性の他人への感染力を弱めると同時に、非感染者のリスクを減らす方法だ。また、HIVに感染した精子内のウイルスを殺菌、あるいは弱体化させる直腸殺菌剤も効果が期待できる。(c)AFP