【6月15日 AFP】患者自身の幹細胞から作られた静脈の移植手術にスウェーデンの医師らが世界で初めて成功したことについて、14日の英医学専門誌ランセット(The Lancet)で発表された。この技術を用いることにより、透析や心臓バイパス手術で必要となる健康な血管を持たない患者らも恩恵を受けられるのではと期待が寄せられている。

 従来使われている人工血管は凝血塊や血管閉塞を引き起こしやすく、また他人の血管を移植した場合にも生涯にわたって免疫抑制剤を服用する必要がある。また患者自身の血管を取り出して移植する場合でも、摘出部位に損傷を与え障害を残すリスクがあった。

 今回の移植手術では、肝外門脈閉塞を患った10歳の女の子に、女の子自身の幹細胞から作った静脈を移植することに成功した。

 スウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg)の医師らは、死亡したドナー(臓器提供者)の体から摘出した長さ9センチの静脈から生きた細胞を全て取り除き、女の子の骨髄から採取した幹細胞を注入。2週間後、この静脈を女の子の体に移植した。

 手術の結果、女の子には合併症も見られず、血流はすぐに正常な状態に回復し、免疫抑制剤を投与する必要もなかった。1年後には追加の移植手術も行われたが、術後の経過は順調で、現在は3キロまでの歩行や軽い運動ができるまでに回復しているという。

 だがこの新治療については、高額な費用と長い準備期間を要することから、一般的な治療法として確立するまでには至っていないため、研究チームは臨床試験の必要性を訴えている。(c)AFP

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