【6月8日 AFP】母親と父親のDNAを合わせて解析することで胎児の遺伝子情報を詳細に調べる方法を発見したとする論文が、6日の米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」に掲載された。遺伝性疾患の出生前診断がより容易になる可能性があるという。

 これまでの研究では、母親の血液サンプルを使って胎児の遺伝子の一部を調べることができることが示されていた。これに対し、全米科学財団(National Science FoundationNSF)の特別研究員で米シアトル(Seattle)のワシントン大学(University of Washington)所属のジェイコブ・キッツマン(Jacob Kitzman)氏らは、父親と母親のDNAを組み合わせることによって胎児の遺伝子のより正確な見取り図を描くことに成功したという。

 研究チームは、この方法を使えば胎児の遺伝子が持つ微妙な差を「DNAコードの1文字分という微細な変化」までより細かく調べることができると説明している。

 この発見によって、新生児の約1%に発症する約3000種類の単一遺伝子病(メンデル遺伝病)の診断技術が進歩することが期待できる。たとえばハンチントン病、マルファン症候群、網膜芽細胞腫、嚢胞性線維症、一部のアルツハイマー病などだ。

 現行の出生前血液検査では、ごく一部の遺伝病や、ダウン症など特定の先天性異常の診断しか行われないのが一般的。今回の発見を基に研究が進めば、子宮に針を刺してサンプルを採取する羊水検査や絨毛検査(CVS)といったリスクを伴う診断法を避けつつ、より包括的な血液検査による出生前診断が可能になるかもしれない。(c)AFP

【関連記事】
胎児の遺伝子構造、母親の血液から明らかに 香港研究
腹部に針を刺さないダウン症診断法、2年以内に普及の可能性