【5月29日 AFP】耳鳴りの症状は、それで苦しむ人の人生を台無しにしかねないほどのものだが、新たに考案された治療方法の組み合わせで苦痛を大幅に緩和することができるとする研究が、25日の英医学専門誌ランセット(Lancet)に掲載された。

 この治療方法は、心理学的なトレーニングと小人数のグループによる音響セラピーを用いて、苦痛を軽減するとともに耳鳴りの音を気にならないようにするというもの。

 オランダのマーストリヒト大学(Maastricht University)のRiana Cyma氏とJohan Laymen氏率いる研究チームは、耳鳴りの症状のある245人にこの治療方法を実施し、別の247人には耳鼻科での一般的なカウンセリングという「通常の治療」を施した。

 12か月後、新治療方法を受けたグループは、重度の耳鳴りに起因する問題について33%の改善がみられた。一方、「通常治療」のグループの改善は13%だった。

 また、科学的に検証されたアンケートで、新治療を受けたグループでは生活の質(QOL)と苦痛の面でも大幅な改善が確認された。

■耳鳴りの音を気にしなくさせる効果

 Cyma氏はAFPの取材に「(耳鳴りの)音自体にはなんの治療もしていない」と説明する。「治療後も耳鳴りは聞こえ続けているが、人々は治ったような感じがすると言う。私は患者にこう伝える。『耳鳴りは足に履いた靴のようなもののはず――ずっと感じていたいと思えばそれを感じることができるけれど、それを自然なものにしてしまえば感じなくなる』」

 最大で成人の5人に1人が人生で1度は耳鳴りの症状を経験する。だが耳鳴りの治療は高額であり、またその治療が効果的かどうかを証明する基準もない。

 新治療では、複数の専門家が参加して小人数のグループで長期間にわたるセラピーを行うため治療費は高額になるように思える。そのことをCyma氏は認め、「新治療は高額だ。だが、社会的な観点から詳細に経済的な分析を行った結果、通常の治療よりも少し高額になる程度だった」と語った。(c)AFP