【4月12日 AFP】台湾で人気の植物薬に含まれている成分が、台湾の尿管がん症例の半数以上に関連しているとする研究結果が9日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 問題の成分はウマノスズクサ属の植物に含まれるヒト発がん性物質のアリストロキア酸。ウマノスズクサはアジアの植物薬に使われる一般的な原材料のひとつで、減量や関節痛、胃腸障害の緩和に効果があるとされる。

 今回の研究では、アリストロキア酸がヒトのDNAに作用して、暴露評価の指標となる特有のバイオマーカーを生じさせるとともに発がん物質が取り込まれたことを示す兆候ががん抑制遺伝子内に現れることが確認された。

 過去の研究によると、台湾ではここ数年以内にアリストロキア酸を摂取した人は全人口の約3分の1に上っている。また今回の論文によると、台湾の尿管がんや腎がんの発症率は、アリストロキア酸の摂取が台湾ほど一般的ではない欧米諸国の約4倍だった。

 論文の主著者、米ニューヨーク(New York)のストーニーブルック大学(Stony Brook University)薬学部のアーサー・グロルマン(Arthur Grollman)氏は「珍しいがんだが、台湾は世界中のどの国よりも発症率が高い。腎がんと腎疾患の両方の発症率が高いということは、台湾で何かが起こっていることを示しているとわれわれは考えた」と説明している。

■安全とは限らない天然成分
 
 研究対象となったのは台湾の尿管がん患者151人で、その60%にこの薬草の使用に関連する特有の変異がみられた。特にアリストロキア酸の摂取後に腎皮質には特有の病変が発生し、がん抑制遺伝子TP53には特有の変異の兆候が生じていた。

 グロルマン氏によると、ウマノスズクサ属の植物は歴史上、古くから世界各地で薬草として使用されてきた記録がある。しかし、ウマノスズクサ属の1種の種子をパンに混ぜ込む習慣があったバルカン半島諸国で、1956年にアリストロキア酸による腎障害の発生が指摘されて以降、その危険性に対する認識が高まった。また1990年代にはベルギーでアリストロキア酸を含む減量薬を使用した女性たちが突然、末期状態の腎不全になったと報告された例もある。

 グロルマン氏によれば、多くの国でアリストロキア酸の危険性を周知する措置が取られているが、アリストロキア酸含有製品がインターネットを通じて流入するのを規制するのは難しいという。また、現在台湾で使われているアリストロキア酸含有製品の大半が中国製だという。

 2001年には米国でアリストロキア酸を含む植物性製品を使用した2人が深刻な腎障害を発症し、米食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)が警告を発している。

 グロルマン氏は「自然のものであれば必ずしも安全だというわけではない。長期の使用となればなおさらだ」と注意を喚起している。(c)AFP/Kerry Sheridan