【3月28日 AFP】けいれんを抑えるバクロフェンという薬が、アルコール依存症の治療にも効果があるかを調べる正式な臨床試験に道を開く研究結果が、医学誌「アルコールとアルコール依存症(Alcohol and Alcoholism)」に掲載された。

 バクロフェンはてんかんの治療薬として約50年前に開発されたが、けいれんを抑える薬として認可された。「ケムストロ(Kemstro)」「リオレサール(Lioresal)」「ガブロフェン(Gablofen)」などの商品名が付けられている。

 2008年に心臓専門医のオリビエ・アムセン(Olivier Ameisen)氏が、著書『Le Dernier Verre(最後のグラス)』で、バクロフェンの大量投与で自らのアルコール依存症を克服したと書いたことから注目を集めた。

■80%の人に効果

 今回の研究では、大量飲酒の習慣がある132人に1年間にわたって高用量のバクロフェンを投与した。その結果、80%が断酒に成功するか、適度な酒量になったという。

 現在アルコール依存症治療に広く使われているナルトレキソンとアカンプロセートの治療成功率(20~25%)より大幅に高い。ただバクロフェンを使用した際の副作用として、疲労、眠気、不眠、目まいや胃腸障害などがみられたという。

 研究を主導したパリ第5大学(University of Paris-Descartes)のフィリップ・ジョリ(Philippe Jaury)氏は、この結果によって1年間の臨床試験に道を開いたと話している。5月からアルコール依存症患者320人が参加する臨床試験が行われる見込みだという。

 参加者を2つのグループに分け、片方にはアルコールへの欲求がなくなるまでバクロフェンを段階的に量を増やしながら投与し、もう片方にはプラセボ(偽薬)を投与する。

 ジョリ氏がAFPに明かしたところでは、臨床試験の費用120万ユーロ(約1億3300万円)のうち、フランスの保健制度が75万ユーロ(約8300万円)、匿名の資金提供者が残りを負担するという。(c)AFP