【3月23日 AFP】消炎鎮痛剤イブプロフェンで、高山病の急性症状が緩和できるとする米スタンフォード大(Stanford University)の臨床研究が20日、医学誌「Annals of Emergency Medicine(救急医療年報)」オンライン版に発表された。

 高山病は頭痛、疲労感、目まい、吐き気、嘔吐や食欲不振などの症状を伴い、ひどい場合には致死率の高い脳水腫を引き起こすこともある。登山やスキーを楽しむ数百万人の米国人のうち4分の1が発症しているとされる。

 研究チームは今回、カリフォルニア(California)州ビショップ(Bishop)北西に位置するホワイト山脈(White Mountains)で実験を行った。男性58人と女性28人に、まず高度1250メートル地点で一晩過ごしてもらい、翌朝8時に市販のイブプロフェンまたは偽薬それぞれ600ミリグラムを服用してもらった。被験者らはその後、高度3566メートル地点まで登り、午後2時に同量を服用。そして最後に高度3831メートルまで登って、午前8時に同量の薬を服用してから、一夜を過ごした。

 するとイブプロフェンを服用した44人のうち高山病を発症したのは19人だったのに対し、偽薬を服用した42人では29人が発症していた。これは、イブプロフェンによって高山病の発症率が26%抑えられたことになると研究者らは指摘している。また、イブプロフェン服用者では、発症しても症状が比較的軽かったとしている。

 高地では低い気圧のため大気中の酸素濃度が薄くなり、呼吸が難しくなる。酸素不足で脳内の液体が膨張することが高山病の原因だともされており、研究チームはイブプロフェンがこの膨張を抑えるのではないかと推測している。(c)AFP