【3月14日 AFP】(写真追加)スペインの医師団は13日、気管支閉鎖症の胎児の肺の手術に成功していたことを発表した。このような手術は胎児では世界初とされる。発表によると、バルセロナ(Barcelona)にある2つの病院の医師らが、2010年に先天的に気管支と気道の接続異常のある胎児の口から内視鏡を入れ、右の気管支と中央の気道をつなげる手術を行ったという。

 ホスピタル・クリニック(Hospital Clinic)母胎医療科のエドゥアルド・グラタコス(Eduard Gratacos)科長は記者会見に臨み、「この手術については、試みられたのも、成功したのも世界初」と述べ、「手術部位は心臓の近くで、極めて慎重を要するものだが、手術をしなければ胎児が生き延びることはできなかった」と述べた。

 同科長によると、気管支閉鎖症を持つ胎児の割合は1万分の1ほどで、約90%は死亡するという。

 術後11週間で生まれた女の赤ちゃんは、バスク語で「喜び」を意味する「アライツ(Alaitz)」ちゃん。産まれた当時の体重は2500グラム。現在1歳半になったアライツちゃんは13日、同クリニックで行われた記者会見に赤いリボンをつけて両親と共に出席、初めてその姿を見せた。

 母親のモニカ・コロミナス(Monica Corominas)さん(33)は、妊娠中に超音波システムで胎児に異常が見つかり、唯一残された手術にかけたという。

 モニカさんは会見で「彼女はうれしいと笑うし、おなかがすくと泣くし、まったく普通の子です」と述べた。 
 
 手術がおこなわれた当時、26週の胎児だったアライツちゃんの体重はわずか800グラムで、手術は万全を期しながらも30分以内に終えられた。同科長は、こうしたケースの手術は「銀行強盗のように」手早く行わなければならないとした。

 アライツちゃんは生後13日で、気管支の異常によって損傷した右肺の肺葉を2か所切除する手術を行った。医師団によると、肺葉の切除が今後の健康や生活の質に影響することはないという。

 ホスピタル・クリニックは胎児手術を行う医療機関としては世界で5本の指に入り、年間200件の手術を行っている。(c)AFP/Marcelo Aparicio