【2月8日 AFP】ドーナツでハンバーグをはさんだハンバーガーなど、高カロリー料理で知られる米国の人気料理研究家ポーラ・ディーン(Paula Deen)さん(64)が、長らく糖尿病を患っていたと明かした上に、糖尿病治療薬の宣伝役を務めると発表したことに批判が高まっている。

 ディーンさんは3年前、2型糖尿病と診断されながらも、米テレビチャンネル「フードネットワーク(Food Network)」が放映する自身の料理番組で、食の専門家たちから「怒りを覚えるほど不健康な料理」と糾弾されている創作料理を紹介し続けた。

 日々、肥満の問題との格闘が続く米国で、高カロリー料理を披露し続けるディーンさんに厳しい言葉を浴びせる人も少なくない。最近の調査結果によれば米成人の3人に1人、子どもの6人に1人が肥満。健康な食生活を促進する数々の努力にも関わらず、米国における肥満の問題は、より深刻化している。

 さらにディーンさんの印象を損ねたのが、医薬品大手ノボノルディスク(Novo Nordisk)の糖尿病治療薬「Victoza」や、その販売促進キャンペーン「Diabetes in a New Light(糖尿病に新たな光を)」で宣伝キャラクターを務めると発表したことだ。

 テレビ料理番組「No Reservations」で人気のシェフ、アンソニー・ボーディン(Anthony Bourdain)さんは、「脚を骨折させておいて、後から松葉杖を売ってもうけようとしている」と、ツイッター(Twitter)でディーンさんを厳しく批判。ボーディンさんは以前にも、肥満が深刻なまでにまん延する米国で次々と高脂肪料理を生み出すディーンさんを、「最低で最も危険な米国人」と攻撃している。

 容赦なく料理に臨む姿が人気のディーンさんの料理ショーは、10年も続く長寿番組。このほかにも手がけた料理本は15冊。ジョージア(Georgia)州サバンナ(Savannah)に人気レストランを経営し、店舗やウェブサイトでクッキング用品の販売も手がける。

 ディーンさんが名声を博しているのは、米南部料理の特徴とされる濃厚な料理の数々だ。バター、クリーム、砂糖など、あらゆるものを組み合わせ、油で揚げたりもする。

 あるときには、肉を高く積み重ね大量に塩を使った料理が、大手食肉企業と結託したものだとの批判を呼んだ。

 ディーンさん大手医薬品企業の糖尿病治療薬を宣伝することに批判が集まるのは、この治療薬「Victoza」が甲状腺がんとの関連が指摘されているという点に加え、毎月の費用が数百ドルと高価なことだ。他の多くの類似治療薬は、Victozaよりも低価格で入手できる。

 ノボノルディスクのキャンペーンサイトで、ディーンさんは呼びかける。「私は世界の皆さんに、(糖尿病と診断されたからといって)死の宣告を受けたわけではないと伝えたいのです」

 しかし、ディーンさんへの同情の声は多くない。

 ある書き込みは、ディーンさんが3年前に糖尿病と診断されていたことを今まで公表していなかったことに怒りを示す。「3年間も炭水化物や脂たっぷりの料理を与えておいて、ファンを同じ運命に引きずりこんだのさ。そしたらどうだ、突然魔法の薬を持って現れて、これを使えばいいと言うんだ」

 ディーンさんの2人の息子、ジェイミー(Jamie Deen)さんとボビー(Bobby Deen)さんも、ノボノルディスクの件では母親に怒りを感じているという。2人は、同社と数百万ドルの宣伝契約を結び、ディーンさんがこれまでの薬からノボノルディスクの薬に変えたことで、健康がさらに悪化するのではないかと懸念している。
 
 ちなみにボビーさんも料理ショーの司会を務めているが、番組のタイトルは「Not My Mama's Meals(ママの料理じゃないよ)」だ。

 その一方で、ディーンさんを擁護する人々は、肥満の問題はディーンさんとは無関連だと主張する。

 その1人で評論家のギャリー・フィンガー(Gary Finger)さんは、米紙USAトゥデー(USA Today)のブログで「人々が何を食べるかにまで、彼女に責任はない」と述べ、ディーンさんはただ、人々が食べたいと欲していた料理を提供することに心血を注いできただけだとかばった。(c)AFP/Fabienne Faur

【動画】ディーンさんの番組で紹介されたチーズケーキのアレンジ