【2月6日 AFP】男性ホルモンの1種、テストステロンは人の判断をゆがめさせ、協力が必要な時も1人で判断したほうがよいような印象を与えるとの研究報告が1日発表された。

 英ロンドン大学(University of London)のニコラス・ライト(Nicholas Wright)氏率いる研究チームは、テストステロンを投与された女性たちが協調行動をとりにくくなることを実験で示した。

 協力し合うことと単独行動の間の適切なバランスを見出すこと、そしてそれぞれがどんな時に適しているかを知ることは、生きていくうえで不可欠なスキルだ。

 ある状況下で望ましい結果を得るためには、他者と協力することが最善策となる。ライオンやハイエナが集団で狩りをしたり、人が競技場や実験室、戦場などで協力したりするのはそのためだ。しかし、またある場面では、集団思考を打ち破ったり、他者よりも優位に立ったりするために断固とした個人行動が必要な時もある。

 この両極端の間の選択肢を選んで生きていく能力のかなりの部分は、学習や経験によって獲得されるが、生得的な部分もある。例えば、集団的意思決定の生物学的基礎について調べた研究で、オキシトシンというホルモンが協力作業に駆り立てることが示されたことがある。

 一方でテストステロンが、リスクを恐れない姿勢や反社会的行動、コンタクトスポーツ(相手の体に接触するスポーツ)やウォール街での金融取引などをあおる、ある種の攻撃性を促すこともよく知られている。

■テストステロン投与で自己中心性が増す

 しかしテストステロンが人を協力から遠ざけ、より自己中心的にさせるかどうかは分かっていなかった。テストステロンは、男性ほどのレベルではないが、女性の体内にも存在する。男性にさらにテストステロンを与えると、身体のホルモン生成を抑制してしまう影響があるため、研究チームは女性を対象に実験を行った。

 まず互いに顔見知りではない女性17組34人の有志を対象に、1日間の実験を行い、それから1週間を置いて再度1日間の実験を行った。1日は2人にテストステロンのサプリメントを投与し、もう1日は2人ともに偽薬を与えた。

 実験の間は各組ごとに同じ部屋の中で、別々のコンピューター画面の前に座ってもらった。2人には同じ2つの画像を見せ、コントラストが高い方を選んでもらった。2人の意見が一致すれば終了、意見が食い違った場合には相談して、一致した結論を出すよう指示した。この実験では、偽薬を与えられたペアのほうが、テストステロンを与えられたペアよりもうまく正しい答えを導き出せた。

 ライト氏は「テストステロンのレベルの高さは、自己中心的な態度や、パートナーの選択よりも自分の選択を優先する決定などと関連していた」と述べた。それは自分の決定が間違っている場合でもそうだったという。「テストステロンが多すぎると、他人の意見に耳を傾けにくくなることもあるかもしれない。これは特に、たとえば陪審員団などで、支配的な個人が自分の意見を言い張りたがるような場合に大きく関係している可能性がある」(c)AFP/Marlowe Hood