【1月12日 AFP】記憶力に軽度の衰えがみられる高齢者の治療として、少量のニコチン療法が有効な可能性があると指摘する米大研究者による論文が9日、米国神経学会(American Academy of Neurology)の学会誌「Neurology」に掲載された。

 論文によると、米バンダービルト大学(Vanderbilt University)メディカルセンターの研究チームは、平均年齢76歳で軽度の記憶力低下がある非喫煙者74人(元喫煙者を含む)を2つのグループに分け、それぞれニコチンパッチとプラセボ(偽薬)パッチをつけてもらい、約6か月間にわたって調査を行った。

 その結果、注意力や記憶力、さらには物事に対する理解の速度や確実性といった認識能力テストで、ニコチンパッチを付けたグループの方が、より優れた結果がみられたという。

 さらに調査開始から6か月後、長期記憶を調べたところ、ニコチンパッチを付けたグループでは約46%の回復がみられた一方、プラセボパッチを付けたグループでは約26%の減退がみられた。

 しかし、こうした研究結果にもかかわらず、論文の執筆者であるポール・ニューハウス(Paul Newhouse)教授は高齢者が喫煙を始めることを推奨しない。この好影響が長期にわたって継続するものなのか、さらなる研究が必要なためだという。

 ニューハウス教授によれば、研究は米国立老化研究所(National Institute on AgingNIA)が出資して行われたもので、製薬会社からの支援は一切受けていない。
  
 ニコチンと記憶の関連性は、1980年代に初めて示された。思考および記憶の働きに重要な脳内の受容体を、ニコチンが刺激するとされる。アルツハイマー病の患者では、この受容体に機能障害がみられるという。(c)AFP