【11月18日 AFP】ロンドン(London)のキングズ・カレッジ病院(King's College Hospital)は15日、致命的な肝疾患を患った生後8か月の男児の腹部に、仮の肝臓として働く細胞群を注射するという画期的な処置を施したところ、男児が順調に回復したと発表した。

 英国放送協会(BBC)によると、医師団は男児の免疫系に破壊されないよう、あらかじめ化学処理を施した肝細胞群を、男児の腹部に注射した。すると肝細胞は、毒素を分解しタンパク質を合成するなど、一時的に肝臓の機能を示し始めた。一方、ウイルスで損傷した男児の肝臓は、注射から2週間後に回復を始めたという。

 通常ならば、この男児も他の肝疾患患者同様、ドナー待ちリストに名前を連ねていただろう。この手法を使うことによって、可能性の少ないドナー提供を待つよりは、もっと多くの命が救われるのではないかという期待が生まれている。

 英国の肝臓病患者団体「British Liver Trust」のアンドリュー・ラングフォード(Andrew Langford)事務総長は、BBCに、「この新しい医療技術の原理は、非常に画期的なものだ。大人にも子どもにも標準的な治療法となり得るかを見極めるために、臨床試験をどんどんやってほしい」と話した。

 英国では、ドナーによる肝臓提供が間に合わず、毎年約100人が死亡しているという。(c)AFP