【10月20日 AFP】ティーンエージャーにとって夜勤は疲れるだけでなく、のちに多発性硬化症(MS)を発症する危険性も増大するとした研究結果が、19日の医学誌「Annals of Neurology(神経学紀要)」に発表された。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)のチームは、同国で行われた2つの研究のデータを細かく分析した。1つ目は2004年以降にMSと診断された患者1343人とMSではない対象群2900人を比較したもの、2つ目はMSの既往症がある5129人と対象群4509人を比較したものだ。対象者の年齢は16~70歳で、仕事生活と夜勤の有無に関するアンケートに全員が回答した。

 研究チームが夜勤(午後9時から午前7時までのいずれかの時間帯)の経験がある人とない人でMSの発症率を比較してみたところ、どちらの研究でも、20歳未満での夜勤経験が長い人のMS発症リスクは夜勤を一度もしたことがない人の2倍だった。

 研究チームは、夜勤により概日リズムが狂い、睡眠時間も減ったことがMSの発症に起因している可能性を指摘する。実際、体内時計の乱れと睡眠の質低下が免疫系に悪影響を及ぼすことは示されているという。

■「20歳未満」限定という驚き

 研究チームが驚いているのは、MSの発症と何らかの関連性があると見られるのが「20歳未満での夜勤」だけだったことだ。研究を率いたAnna Hedstroem氏によると、「若い時の肥満のみがMSリスクを増大させ、大人になってからの肥満は影響しない」ことを示した研究もあるという。

 MSは、免疫系が神経繊維の保護膜である脂肪質のミエリンを攻撃することで発症する。この結果、神経信号は迷子になったり遅れたり途切れたりし、筋肉の協調、体の平衡、発話、視覚に障害が生じる。障害は病気の進行とともに重くなる。

 発症するのはほぼ1000人に1人。環境的要因と遺伝的要因の双方が絡んでいると考えられている。(c)AFP