【9月6日 AFP】米アルバート・アインシュタイン医科大(Albert Einstein College of Medicine)の研究チームは4日、新たに開発した結核ワクチンがマウスの実験で有効性を示したと、英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に発表した。

 世界保健機関(WHO)によると、結核は毎年170万人の命を奪っている。現在使用されている唯一のワクチンは効果がみられない場合もあり、信頼性が高いとは言えない。

 ウィリアム・ジェイコブズ(William Jacobs)教授率いるチームは、ヒト型結核菌がヒトの免疫をかいくぐって結核を引き起こす仕組みを理解することが、結核予防においては最も重要だと考えた。免疫系はT細胞を使って感染を阻止するため、結核ワクチンはこのT細胞を活性化させる必要がある。

 研究チームは、ヒト型結核菌に極めて近く、増殖するとマウスを死に至らしめるが人間には害を与えないスメグマ菌で実験を行った。スメグマ菌を宿主の免疫から逃れさせる遺伝子群「ESX-3」を取り除いた改変スメグマ菌を作製してマウスに大量に投与してみたところ、予想通りマウスは病気にはならなかった。ESX-3を取り除かなかった改変スメグマ菌の場合は免疫系を素通りしてしまった。

 ただし、この実験には1つの障害があった。ヒト型結核菌からESX-3を取り除くと菌が死んでしまったため、ワクチン製造に向けた操作ができなくなったのだ。

■「ハイブリッド」菌をワクチンに

 そのためジェイコブズ教授は、ESX-3を取り除いたスメグマ菌にヒト型結核菌のESX-3を組み込むという方法を試みた。

 こうしてできた「ハイブリッド菌」をワクチンとしてマウスに投与したところ、マウスは感染しなかった。また、人間だけではなくマウスにも有害なヒト型結核菌にマウスを8週間暴露させたところ、対照群では平均で54日しか生きられなかったが、ハイブリッド菌を投与されたマウスでは平均135日と、3倍近く長生きすることができた。

 さらに、ハイブリッド菌を投与された後に200日以上生きたマウスの肝臓からは、結核菌が全く検出されなかった。このような事例は初めてだという。

 ただし論文は、このような効果があったマウスは全体の5分の1だけだったため、ワクチンを改善する必要があるとしている。ジェイコブズ教授は、「人間に効果があるのかさえわからない段階だが、重大な一歩であることは確かだ」と述べた。(c)AFP