【8月2日 AFP】米国で2012年から、経口避妊薬や授乳キット、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染検査など、女性に提供される保健医療サービスの一部が無料化される。前年に成立した医療保険改革法案(患者保護・医療費負担適正化法、Patient Protection and Affordable Care ActPPACA)の一環だ。

 米政府は1日、PPACAを受けた女性向け医療保険サービス改革の内容を発表した。8項目のサービスについて自己負担や免責金額がなくなり、女性1人当たり年間数万円の負担軽減を見込んでいる。キャスリーン・セベリウス(Kathleen Sebelius)厚生長官は「この画期的な指針は科学的根拠と既存文献を基礎としており、女性たちが必要とする予防医療を確実に届ける一助となるだろう」と述べた。

 米保健社会福祉省によると無料化されるのは、(1)米食品医薬品局(FDA)が認可済みの避妊方法と避妊カウンセリング、(2)授乳支援・カウンセリング、(3)ドメスティック・バイオレンス(DV)に関するカウンセリングと評価、(4)年1回の職場健診または婦人科健診、(5)妊娠糖尿病検査、(6)30歳以上の女性を対象としたヒト・パピローマウイルス(HPV)検査、(7)性感染症カウンセリング、(8)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査・カウンセリング。

 また補則として、宗教団体・機関で働く女性の避妊関連サービスに保険を適用するか否かは、その団体・機関が独自判断で行うことを認めている。

■宗教団体の免責条項に賛否

 今回の改革内容について、女性団体などは全般的には「大きな進歩」と歓迎しつつ、宗教団体の免除条項については失望感を示している。

 全米女性機構(National Organization for WomenNOW)のテリー・オニール(Terry O'Neill)代表は、AFPの取材に対し「保険会社に避妊に関する費用を負担させることは、女性の保健医療にとって最も重要なことの1つなのに。受胎調節の権利を女性の手から取り上げておきたい狂信者たちを、厚生長官は甘やかすべきではない。長官にはがっかりさせられた」と述べた。

 一方、保守派のロビー団体、家庭調査協議会(Family Research Council)のジャンヌ・モナハン(Jeanne Monahan)氏は、「非常に厳格な基準を満たそうとする一部の教会がその良心を守るためには、まだイチジクの葉ほどのものでしかない」と語り、補則の免除条項では不十分だと不満を表明した。

 また同氏は、無防備な性交渉が行われてから72時間以内に行う緊急避妊にも保険が適用される点についても「多くの人びとの良心に踏み込むことを促すものだ」と懸念を表明した。

 米国の男女を比べた場合、女性のほうが妊娠・出産など生殖活動に関わる身体の変化がある分、男性よりも医療費が高い傾向がある。しかし、民間の健康保険は一部にしか適用されない。米国医学研究所(Institute of Medicine)は19日の報告書で、米国女性の健康を増進するためには医療保健サービスの負担をなくすべきだと提唱していた。(c)AFP/Kerry Sheridan