【8月2日 AFP】ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や梅毒の病原菌などの感染を検査する安価で携帯性に優れた血液検査ツールが、コストのかさむ医療機関での分析と同程度の正確性を発揮することが証明されたとの研究が、7月31日の英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に掲載された。

 研究チームがルワンダで、数百人を対象に「チップ上の検査ラボ」とも呼ばれるクレジットカード大の「mChip」という器具を使って検査を行い、検査室での検査結果と比較したところ、ほぼ100%に近い正確さだったという。

 世界の最貧地域に効果的に医療を提供する上で、この種の検査は「実施が困難」「費用が高い」「結果が出るまでに時間がかかる」という3つの問題が壁となっている。研究チームは、mChipはこれらの問題を打破するのに役立つと考えている。

「病院に行き、採血して、結果が出るまで何日も待つようなやり方を強いるのではなく、世界中のどんな環境下でも患者に多様な診断検査を提供したいと考えた」と、mChipの開発を率いるサミュエル・シア(Samuel Sia)米コロンビア大(Columbia University)教授は語る。

■チップ製造コストは1枚1ドル

 mChipの製造コストは1枚1ドル(約77円)になると見積もられている。検査ラボよりも、はるかに安価だ。また1回の採血で、ひとつの病気に関連した複数のタンパク質を1度に検査できるので、コストはさらに安くなるだろう。

 また、妊娠検査薬のような現在出回っているHIVの簡易検査キットは「結果を主観的に読み取らねばならず、陰性でも誤って陽性だと結論づけてしまうこともある」と、研究は指摘している。つまり誤診の可能性があるということだ。

 しかし、mChipは100ドル(約7700円)程度の携帯機器を使い、操作は携帯電話ほど簡単で、結果は数分で示されるが、従来の簡易検査キットより正確性も高い。
 
 mChipはプラスチックのカードの内部にマイクロチップが組み込まれている。マイクロチップには、検査したい病気に対応する血液中の特定の「バイオマーカー」に反応するエリアを最大で10か所作ることができる。

 反応エリアは金と銀を使った極めて薄いフィルム状になっていて、サンプルの血液中のバイオマーカーの濃度に応じてフィルムの色は変化する。これを利用し、フィルムの色の変化を読み取って、検査結果を判断する。結果はLEDを使った判別装置で表示されるが、肉眼で確認することもできる。

■正確さはほぼ100%

 ルワンダの首都キガリ(Kigali)の病院で、HIV感染の有無が分かっている男女70人の血液をmChipで検査したところ、誤った検査結果が出たのは1例だけだった。これは検査ラボの検査に比肩しうる正確性だという。保存されていた100人以上の血液や、HIVと梅毒の両方に感染していることが分かっている性産業で働く女性たちの血液検査でも正確性は同水準だった。

 現在、低・中所得国では、HIV検査を行う妊婦は4人に1人しかいない。これでは、国連(UN)が2015年までに掲げるHIV母子感染の削減目標は、まったく達成される見込みがない。研究チームは、mChipによって特にアフリカで、妊娠中の女性の検査が増えることを期待している。(c)AFP/Marlowe Hood