【7月28日 AFP】2001年9月11日の米同時多発テロで世界貿易センタービル(World Trade CenterWTC)が崩壊した際に発生した粉じんや、その後のがれき処理と、発ガン性の関連を検証していた米政府の科学者チームは26日、ガンとの関連を示す科学的な証拠はないと結論付けた報告書を発表した。

 93ページに及ぶ報告書は「ガン、もしくは特定のガンをWTCビル関連の健康医療補償の対象とするに足る十分な証拠は、現時点では存在しない」と指摘。ただ、この結論は暫定的なもので、2012年半ば頃までに最新データを含めた新たな報告書を発表するとした。

 報告書をまとめた医師で「世界貿易センター健康プログラム(World Trade Center Health Program)」を率いるジョン・ハワード(John Howard)氏は、「重要なのは、同時多発テロと救急作業にあたった消防隊員や生存者のガン発症との因果関係を示す科学・医療論文が現時点では欠如しているという事実が、因果関係が存在しないという証拠にはならないという点だ」と強調した。

■消防士や警官らは怒り

 現場で救助活動にあたった消防士や警官、その同僚らからは怒りの声が上がっている。報告書の結論は、米議会が今年初めに採択した9.11の救助活動で健康を害した救急隊員や消防士らを対象とした医療保障法案の支給対象に、ガン患者が含まれないことを意味するからだ。

 彼らは、ガンに苦しむ多くの同僚を目にしており、WTCビルでの救助活動と発ガン性が無関連とは考えられないと主張する。

 9.11で救出活動にあたった後34歳で病死した警官の名にちなんだ「ジェームズ・ザドロガ9.11健康補償法(James Zadroga 9/11 Health and Compensation Act)」を議会に提出したカロリン・マロニー(Carolyn Maloney)、ジェロルド・ナドラー(Jerrold Nadler)、ピーター・キング(Peter King)の3議員は共同声明を発表し、「WTCビル崩壊によって、発ガン性物質を含んだ有害な粉じんが一帯に拡散した。よって、法が補償する医療費の支給対象にガンも含めることを求める」と要求した。(c)AFP

【関連記事】9.11テロ、ツインタワー崩壊時の粉塵で数年後に頭痛の恐れ