【7月19日 AFP】オーストラリアで今年6月後半から馬へのヘンドラ(Hendra)ウイルス感染が拡大している。豪保健当局は17日、ニューサウスウェールズ(New South Wales)州で前週に急死した馬がヘンドラウイルスに感染していたことを明らかにし、今回の流行で死亡、あるいは殺処分された馬は12頭となった。

 ヘンドラウイルスは1994年に豪州で初めて発見された。今回の流行で人への感染は確認されていないが、過去に同ウイルスに感染した7人中、4人が死亡している。

 ニューサウスウェールズ州のイアン・ロス(Ian Roth)獣医局長は、今回の感染例と豪州東海岸一帯で相次いで確認されている感染例に直接の関連性はみられないとしたうえで、今回急死した馬はイチジクの木があるパドックにいたことから、果物などを食べるオオコウモリを介してヘンドラウイルスに感染した可能性が高いとの見解を示した。

 一方でロス氏は、馬から人へのヘンドラウイルスが感染は極めてまれだと強調するとともに、最善の感染防止対策として、馬をオオコウモリと接触させない対策をとるよう、馬を飼育する牧畜業主らに呼び掛けている。

 これまでにニューサウスウェールズ州の3か所、クイーンズランド(Queensland)州の6か所で馬へのヘンドラウイルス感染が確認されているが、これらの馬はオオコウモリが口をつけた果物や、オオコウモリのふんに汚染された水や飼料を介して感染したとみられている。

 ヘンドラウイルス感染の拡大によって、世界有数の競走馬を輩出してきたオーストラリアの競走馬産業が打撃を受けるのではないかと懸念する声も上がっており、すでに豪国内100か所以上の競馬場で感染リスクを調べる検査が行われた。しかし、競走馬は基本的に屋内で飼育されるため感染リスクは低いと考えられている。(c)AFP

【参考】厚生労働省検疫所「ヘンドラウイルス感染症(ウマモルビリウイルス肺炎)がオーストラリアで発生しています」