【6月1日 AFP】ドイツ北部ハンブルク(Hamburg)の保健当局は5月31日、ドイツを中心に欧州で相次いでいる食中毒の感染源と疑われたスペイン産キュウリ4検体を検査したところ、2つの検体から腸管出血性大腸菌(EHEC)が検出されたが、問題となっている病原性大腸菌とは別のものだったと発表した。

 残りの2検体の結果はまだ出ていない。ハンブルク保健当局は「感染源は、依然として特定できていない」と発表した。 

 ドイツなど欧州各国ではこのところ病原性大腸菌が引き起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症者が相次ぎ、これまでにドイツで15人、スウェーデンで1人が死亡している。 

■農業に大打撃

 スペインの輸出産業協会によると、ドイツの食中毒問題でスペイン産のキュウリが原因との見方が広がって以来、スペイン産の果実や野菜の輸出量が欧州全域で激減している。

 スペインのロサ・アギラール(Rosa Aguilar)環境・農村・海洋相によると、スペイン産農産物の輸出損失は毎週2億ユーロ(約234億円)を上回るとみられ、同国農業が置かれた状況は「極めて深刻」だという。

 このため、欧州でキュウリ生産第1位のスペインや、同2位のオランダの政府は野菜輸出の急激な落ち込みに対する補償を欧州連合(EU)に求めた。

 ドイツ政府は、問題となっている食中毒の感染源は生鮮野菜とみており、影響を受けた地元の農家への融資のために補助金を出す考えを示した。

 腸管出血性大腸菌に感染すると、最悪の場合には出血性の下痢、腎不全などの症状を伴う溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症する。ドイツの各自治体の統計を合計すると、ドイツ国内では北部を中心に、これまでに溶血性尿毒症症候群で15人が死亡し、1200人以上の感染が確認されている。

 ドイツのほかにも欧州では、疑い例も含めれば、デンマーク、英国、オランダ、オーストリア、フランス、スペイン、スイスでも腸管出血性大腸菌の感染が報告されているが、いずれもドイツに起因するとみられている。(c)AFP/Francis Curta