【5月13日 AFP】HIV感染者に、健康状態が悪化する前から抗レトロウイルス療法(ART)を受けさせた場合、パートナーへの感染リスクが96%減少するという画期的な研究結果が12日、発表された。

 ARTがHIV感染者の健康を改善することはすでに知られているたが、HIV陰性のパートナーへの感染防止に明確な影響を及ぼすことを示した研究は今回が初めて。エイズ研究者らは、エイズの登場から30年を経て対処法を「一変させる」力を持つ研究結果だと評価している。

 米ノースカロライナ大(University of North Carolina)世界衛生感染症研究所(Institute of Global Health and Infectious Diseases)のマイロン・コーエン(Myron Cohen)所長率いる国際研究チームは、カップル1763組を対象とした実験を2005年に開始した。カップルの居住地はブラジル、タイ、ジンバブエ、インド、南アフリカの13都市で、97%は異性愛カップル。うち男性890人、女性873人がHIV感染者だった。

 実験では、カップルの片方がエイズ関連疾患を発症するか、T細胞「CD4」が1立法ミリメートルあたり250個を下回った後にARTを受けるグループ(遅延グループ)と、ただちにARTを受けるグループとに分類した。

 すると、早期にARTを受け始めたグループでパートナーへの感染が認められたのは1例だけだったのに対し、遅延グループでは、HIV感染者に起因した感染例は27例あった。論文は、この差を「統計的に極めて有意」だと指摘している。

 実験は当初2015年まで続けられる予定だったが、極めて明確で著しい効果が早期に認められたとして、研究チームでは無作為化フェーズは中止した。

 エイズは、1981年に初めての死者が確認されて以来、2500万人以上の死者を出し、HIV感染者も累計で6000万人以上にのぼっている。国連(UN)の統計によると、新たな感染の約80%は性交を通じてのものだという。(c)AFP/Kerry Sheridan