【4月3日 AFP】「明日、クリニックでお会いしましょう」-抗エイズ薬の入荷を知らせるテキストメッセージが携帯電話に届く。南アフリカ最大のエイズ治療施設が発信している無料テキスト配信だ。アフリカで今、6億2400万人の携帯電話利用者をターゲットにした新しい健康管理策モバイルヘルス(mobile healthmHealth)」が動きつつある。

 南アフリカ、ヨハネスブルク(Johannesburg)にあるThemba Lethuクリニックの通知サービス「テキストアラート(txtAlert)」の登録者は約1万人。07年には診療予約に現れない人が全体の15%もいたが、今では4%に減った。

 アフリカは固定電話が普及しておらず、病院の病床数も少ない。しかし、携帯電話の利用者は多い。mHealthならば低コストでヘルスケアを提供できる。

 西アフリカではガーナで2200人、リベリアで143人の医師が反貧困団体アフリカ・エイド(Africa Aid)のネットワークに登録しており、他の医師らと無料で通話やメッセージ交換ができる。専門医のリストもある。携帯大手の協力を得たこのネットワークは、これまでに約250万回利用された。

 ガーナのクマシ(Kumasi)で開業する小児科医Frank Serebour氏は最近このネットワークを使い、自分の医院に運び込まれた乳児の緊急手術を行ってくれる専門医を、270キロ離れた首都アクラ(Accra)から見つけることができた。「すべてのアフリカ諸国にこのシステムが広がってほしい。医師だけでなく看護師や助産師もつなげたら素晴らしい」と語った。

■最大多数に届く最も安価な健康サービス

 国連財団(UN Foundation)と英携帯電話ボーダフォン(Vodafone)の提携の調整役を務めるAdele Waugamanさんによると、mHealthセクターの価値を金額に換算すれば、最大600億ドル(約5兆円)の価値があると言う。「疾病によってもたらされる負担が世界の他とは比較にならないほど大きく、一方で国民1人当たりの医師の数が最も少ないアフリカにおいて、mHealthの可能性は無限大」だと期待する。

 例えば17年間に及んだ内戦とジェノサイドの傷跡が生々しいルワンダでは、国民1万8000人に対する医師の数は1人。この状況を克服するためにルワンダ保健省は今、インターネット健康プログラム「eHealth」で、mHealthの先陣を切ろうとしている。

 そのひとつが米モバイル健康サービス企業Voxivaが開発したプロジェクト「TRACnet」だ。HIVデータの追跡から事例報告を欠かさないための通知、薬の在庫状況のモニタリング、検査結果の通知などを行っている。例えば、これまでは4か月かかっていた乳児のHIV検査の結果通知は2週間に短縮された。

 TRACnetはルワンダの450の医療機関が利用しているが、eHealth トレーナーのChristian Munyaburanga氏によると、そうした機関の大半がインターネットに接続できていないばかりか、電気も通っていない。「(HIV関連の)データを管理する唯一の方法がTRACnetなのです」と言う。

 しかしeHealthのコーディネーター、Richard Gakuba氏はAFPの取材に対し「この技術は安いものではない。もっと投資が必要だ」と語った。プロジェクトの拡大は容易ではなく、アフリカの多くの政府はいまだeHealthのような健康政策を手にしていない。

 それでも「txtAlert」を開発した南アフリカのプラエケルト財団(Praekelt Foundation)のMarcha Neethling氏いわく、携帯電話への通知メールを送るためにかかる患者1人当たりのコストは月14セント(約12円)だ。「これだけ大勢の人に行き届くテクノロジーは他にない。そして、これだけ安価なテクノロジーもない。大きな変化をもたらしつつあることは明白です」(c)AFP/Justine Gerardy