【2月14日 AFP】中国当局が、2008年の北京五輪当時と同程度の大気汚染対策を続ければ、北京(Beijing)住民の肺がん発症リスクが半減するとの研究結果が、8日の米医学誌「Environmental Health Perspectives」に掲載された。

 研究を発表したのは、北京大学(Peking University)と米オレゴン州立大学(Oregon State University)の研究者ら。中国の住民の健康に対する大気汚染対策の影響を分析した初めての研究となった。

 研究チームは、石炭の燃焼や、まきストーブ、自動車から排出される多環芳香族炭化水素(PAH)と呼ばれる汚染物質に注目した。中国は世界最大のPAH排出国。2位は米国で3位はインドとなっている。

 オレゴン州立大学の化学・環境毒性学の専門家、ステイシー・シモニッチ(Staci Simonich)氏は、「北京五輪時に当局が行った車両規制や石炭燃焼の削減、汚染物質を排出する工場の閉鎖などにより、PHA汚染は明らかに削減した」と述べた。

 研究によると、人口2200万人の北京市で肺がんを発症する人は現状のPAH汚染レベルだと2万1200人ほどと考えられるが、北京五輪のころと同程度の汚染対策を実施すれば、肺がんの発症事例は1万1400例ほどに減少すると考えられるという。

 中国では、PAHなどの大気汚染に関連した心疾患と肺がんの死者数が年間30万人に上っているとの統計もある。北京市の自動車台数は360万台で、しかも年13%の割合で増加を続けている。研究は「中国の大都市ではPAHによるがん発症リスクを下げるうえで、車の排ガスを規制が非常に重要だ」と提言した。(c)AFP