【1月17日 AFP】生後6か月まで母乳のみで育てることを推奨する世界保健機関(WHO)のガイドラインは、赤ちゃんの健康にとって必ずしも最良の方策ではないとする研究結果を、英国の科学者らが14日、発表した。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)の小児科医が主導する研究チームによると、母乳のみを与えられた赤ちゃんは鉄分不足に陥り、アレルギー症状を引き起こしやすくなる危険性があるという。論文は、生後4か月ごろから離乳させて固形物を食べさせても良い場合があるとしている。

■生後6か月まで母乳だけ=WHO基準

 WHOは10年前、生後6か月まで赤ちゃんに母乳だけを与えるべきとのガイドラインを設けた。このガイドラインは、開発途上国での研究7件を含む16件の研究に「大いに依拠した」もので、WHOは生後6か月間母乳だけを与えた赤ちゃんは、感染症にかかることが少なく、成長障害も無かったと結論づけている。

 しかし、研究チームは「欧州の65%の国や米国など多くの西洋諸国で、このガイドラインの一部または全部を採用しないことが選択されている」と指摘する。

 また、WHOとは別の研究33件を分析した結果、生後4~6か月の間に固形物を食べさせないための「説得力のある証拠は全く無かった」という。また、生後6か月まで母乳を与えた結果、赤ちゃんが十分な栄養を得ることができなかったとする研究結果もあるという。

 さらに、2007年の米研究では、生後6か月まで母乳だけを与えた赤ちゃんは、4~6か月に固形物を与え始めた赤ちゃんと比べて貧血になりやすいとの結果が出ている。

 また、アレルギー関連では、グルテン摂取開始時期のガイドラインを生後6か月に遅らせて以降、早発型のセリアリック病の発症事例数が増加し、推奨時期を4か月に戻したところ元の水準に回復したと、スウェーデンの研究者らが発表しているという。

■健康と味覚発達に4か月から固形物=英研究チーム

 研究チームは、死因に感染症の多い開発途上国では依然として生後6か月まで母乳のみを与えることが推奨されるとした上で、先進国では健康状態を阻害する可能性があるだけでなく「新たな味覚を受け入れる可能性を制限する」ことにもなると指摘している。

 「特に苦味については、緑色野菜などを受け入れる上で重要な可能性がある。これは将来の食事の好みに影響を及ぼす可能性があり、肥満などの健康状態に影響することもありうる」

 欧州食品安全機関(European Food Safety AuthorityEFSA)の食料品・栄養・アレルギー委員会は、欧州連合(EU)全域で、生後4~6か月の間に補助食品を食べ始めることが安全である可能性は高いとの結論を出している。(c)AFP