【11月3日 AFP】疫病のペストは2600年前の中国で初めて発生し、シルクロードを経て欧州にもたらされたとの国際研究チームによるDNA研究結果が前月31日、米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」(電子版)に発表された。中世の欧州で全人口の3分の1が死亡したとされるペストは中国を起源とするとの説を、裏付ける結果だ。

 研究チームはペスト菌17株のDNA配列を解析し、共通の祖先から変異した病原菌の遺伝子系統を調べた。その結果、ペスト菌は2600年以上前の中国で初めて出現したことを示唆する結果が得られたという。

 その後、約600年前からペストは中国からシルクロードを通じて西ヨーロッパに伝わり、さらにアフリカへと拡がった。15世紀に通商貿易航海で活躍した明王朝(1368~1644)の鄭和(Zheng He)も、ペスト菌の拡大に「貢献」したとみられる。

 さらに19世紀末、ペスト菌は中国からハワイ(Hawai)に伝わり、サンフランシスコ(San Francisco)やロサンゼルス(Los Angeles)などの港町からカリフォルニア(California)に上陸。米本土全域へと広まっていった。今回の発見は、ペストだけでなく、炭疽症や結核など感染性の病原菌の起源解明にもつながると期待されている。

 ペスト菌は元来、ネズミなどの齧歯(げっし)類の体内に潜伏しているが、感染した動物の血を吸ったノミを媒介としてヒトに感染する。ペスト菌がリンパ腺に伝播すると、腺ペストを発症する。

 研究は アイルランドのコーク大学(University College Cork)のマーク・アフトマン(Mark Achtman)教授が主導し、米国、英国、中国、フランス、ドイツ、マダガスカルなど、多くの国の科学者が参加して行われた。(c)AFP