【10月12日 AFP】蚊が媒介する感染症で有効な治療法が無いデング熱がアジアで広がっている。英連邦競技大会(コモンウェルス・ゲームズ、Commonwealth Games)が開催中のインドでは、20年ぶりに多い感染者数となっている。

 デング熱は感染拡大の速度が最も速い感染症の1つ。世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は、デング熱が「この数十年で劇的に拡大」しており、世界で25億人が感染の危険にさらされていると警告した。WHO高官によれば、感染の危険にさらされている人のうち70%がアジア地域の人びとだという。

 アジア地域で感染が増加した主な原因には、気候変動により気温が上がったことや、人口増加、外国旅行の増加などが挙げられる。また、都市部の蚊の生息数が急速に増えたことにより、これまでよりも多くの人びとがウイルスに接触する機会が増えたという。

 WHOの統計によると、ことしに入り8月までに報告された感染者数がアジア地域で最も多かったのは、インドネシアの8万65人。次いでタイが5万7948人、スリランカが2万7142人だった。

 WHOアジア地域のヨゲシュ・チョードリー(Yogesh Choudhri)氏は、デング熱が国内でまん延するだけでなく、これまでに感染例の少なかった国にも広がっていると指摘し、「感染拡大は非常に速い。新たな地域でも確認がされている」と語った。

■蚊を媒介に感染

 デング熱は、メスのヤブカ属の蚊による吸血行為で人間に感染する。ほとんどの感染者がインフルエンザのような深刻な症状をおよそ1週間にわたって発症する。2004年にはブータンとネパールでも初めて発見され、インドネシアや東チモールを含む東南アジアと南アジアのほとんどの地域で風土病となっている。

 デング熱のウイルスには4つの株があり、そのうちの1つは致死性の出血熱を引き起こす危険性がある。

 デング熱にはまだ有効な治療法が無い。しかし、いくつかの予防方法は確立されている。最も重要なことは、居住区のそばに蚊が発生するような沼や水たまりがないようにすることだ。

■ニューデリーの病院が感染者でいっぱいに

 7000人の外国人選手・役員が参加する英連邦競技大会が14日まで開催中のインドでは、ニューデリー(New Delhi)の国営病院がデング熱感染者で溢れかえっている。

 インド国家生物媒介疾病管理計画(National Vector-Borne Disease Control Programme)のA.C.ダリワル(A.C. Dhariwal)氏は、インドでは50人が死亡、1万2000人の感染報告があり、20年ぶりの感染者数になっていると、AFPの取材に語った。インドの感染者数の実数は報告例よりもさらに多い可能性が高い。

 一方タイ政府は、タイの若者の間で黒いレギンスが流行していることが、若者たちを感染の危険にさらしていると懸念する。

 タイ保健省のパンシリ・クルナーシリ(Phansiri Kulanartsiri)副大臣は、感染症を媒介する蚊は暗い色に寄ってくる習性があると指摘。「蚊は、薄いレギンスの外からでも吸血することができる。だからレギンスを着ている人はデング熱の感染の危険性が高い」と述べ、「人びとのファッション、特に若者のファッションを懸念している」と語った。(c)AFP/Rupam Jain Nair