【10月1日 AFP】胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使用せずヒト幹細胞を作製する方法を開発したと、米ハーバード大医学部(Harvard Medical School)などの研究チームが医学誌「セル・プレス(Cell Press)」オンライン版に9月30日、発表した。この手法を使えば、極めて効率的に人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製できるという。

 通常は、成熟細胞をiPS細胞に作り替えるタンパク因子を獲得するため、ヒトゲノムを恒久的に書き換えるという手法が取られている。

 これに対し研究チームは、遺伝情報のメッセンジャーであるリボ核酸(RNA)分子を改変し、タンパク質を符号化して細胞のDNAと結合しないようにした。この改変RNAを成熟した皮膚細胞に繰り返し導入したところ、タンパク質の再プログラミングがはっきりと確認され、iPS細胞に作り替えられた。

 こうしてできたiPS細胞に筋肉細胞の発達に関連したRNAを導入すると、iPS細胞は筋肉細胞に分化した。この一連のプロセスは、シンプルで効率も良い上に、危険な遺伝子組み換えを行う必要もないという。

 ハーバード幹細胞研究所(Harvard Stem Cell Institute)のDoug Melton氏は、「この新たな手法は、ヒトの成熟細胞の作り替えにおける飛躍的な前進だ」と話した。同研究所はただちに、この手法を用いて、患者個人や病気に応じたiPS細胞の作製に入る予定だという。(c)AFP