【9月14日 AFP】栄養不良の母親の胎内にいた赤ん坊は、高齢になったときの認知力低下が速く進む可能性があるとする論文が、13日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 成長した後の適度なカロリー制限は老化を遅くし、寿命を延ばす可能性があることは、多くの生物種で共通している。だが、「胎内におけるカロリー制限は後年、心身の健康にさまざまな負の影響を及ぼす」と論文は指摘する。

 オランダ・アムステルダム大(University of Amsterdam)の研究チームは、国内の56~59歳の737人に対し認知機能のテストを行った。対象者の40%は、第2次大戦終盤にナチス・ドイツが同国に5~6か月間行った食糧封鎖により、母親の胎内にいた時に飢餓を経験していた。

 テストの結果、妊娠初期に胎内で栄養不良を経験した64人は、妊娠後期に胎内で栄養不良を経験した人や、栄養不良を全く経験しなかった人に比べて認知テストの成績が悪かった。

 また、妊娠の段階に関係なく、胎内で栄養不良を経験した人は、頭囲が小さい傾向があることも明らかになった。研究チームは、「頭の大きさは脳の大きさと関連があり、頭が小さくなったことは高齢になって認知力が低下したことと関連がある」としている。

 今回の結果が「胎内の栄養状態が悪かった人の認知力の老化現象が加速していることを示している可能性がある」としつつ、この仮説を証明するには、対象者がさらに年を取った時点で再び調査を行うことが必要だとしている。(c)AFP