【8月5日 AFP】細胞内から鉄を取り除くタンパク質で、がん性腫瘍(しゅよう)の発達を遅らせることが可能かもしれないとする論文が4日の米科学誌「Science Translational Medicine」に発表された。乳がんの治療のほか、患者の転帰(治療の経過および結果)予測にも活用できる可能性があるという。

 米ウェイクフォレスト大学バプティストメディカルセンター(Wake Forest University Baptist Medical Center)の研究チームは、細胞内の鉄を排出するタンパク質「フェロポーチン」に着目。乳房の腫瘍におけるフェロポーチンのレベルが、正常な組織のものよりもはるかに低いことを見いだした。

■フェロポーチンの不足で腫瘍が成長

 フェロポーチンが不足すると、鉄が蓄積され、腫瘍が成長する。つまり、がんが活性化される可能性がある。

 研究チームは、ヒトの乳房の腫瘍をマウスに移植したのち、腫瘍内のフェロポーチンを通常レベルに戻すという実験を行った。その結果、腫瘍の成長が遅くなったことが確認された。

 研究チームは、乳がん患者800人以上のデータを基に、フェロポーチンレベルとがんの経過の関係性を調べた。その結果、レベルが低いほど生存率が低く、がんの進行が速い部位ほどフェロポーチンのレベルが低いこともわかった。

 なお、フェロポーチンレベルが高いと生存率も90%の確率で高くなることも明らかになった。

■フェロポーチンレベルの操作で乳がん治療の可能性も

 研究者らは、フェロポーチンレベルまたはフェロポーチンレベルに影響を与えるタンパク質のレベルを操作することで、乳がんを効果的に治療することができるかもしれないと、期待を寄せている。

 なお研究者らは、今回の研究は食物に含まれる鉄分ではなく細胞内の鉄に焦点を当てたものであるため、食事における鉄分摂取量を変更する必要はないとしている。(c)AFP

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