【6月10日 AFP】心疾患によって亡くなるリスクは、背の高い人に比べて、背の低い人のほうが50%高いことを示す研究結果が9日、医学誌「ヨーロピアン・ハート・ジャーナル(European Heart Journal)」に発表された。

 身長が女性では153センチ、男性では165センチ未満の背の低い人のグループと、女性166センチ、男性173センチ以上の背の高い人のグループを比べた場合、前者のほうが心臓血管・冠動脈性心疾患にかかる確率が著しく高かった。

 身長と心臓異常の関係については過去60年で2000件に近い研究が行われてきたが、示される証拠は互いに矛盾していた。

■300万人分のデータを再検討

 今回研究を行ったフィンランド、タンペレ大学(Tampere University)のプーラ・パーヤネン(Puula Paajanen)氏率いるチームは決定的答えを得ようと、最も背の低いグループと最も背の高いグループの差異に焦点をあてることにし、これら過去の研究のうち精度の高い52件の結果を再検討した。データは合計で300万人分に上った。

 ヘルシンキ大学(University of Helsinki)のJaakko Tuomilehto教授は、病態生理学的な要素や環境、遺伝的背景などとの関係は不明だが、研究の結果は「明確に、背が低いほうが冠動脈性心疾患のリスクが高まるという連関性を示していた」と言う。

■原因は冠状動脈の太さか?遺伝か?

 ひとつの説明として考えられるのは、背の低い人のほうが冠状動脈が細いため若い頃から閉塞しやすく、特に胎児期・幼少期の成長段階の栄養不足や感染などが重なるとそれが起こりやすいという説だ。

 また最近の研究では遺伝的要因もあることが分かっているとパーヤネン氏は指摘する。「身長を決定するのは遺伝環境であることを考えると、背が低い人ほど中年以降に心疾患にかかるリスクが高まるという連関も、遺伝的要因で説明しうるかもしれない」と述べる。

 しかし、背が低いからといって心配する必要はないとパーヤネン氏は言う。「身長が低いというのはあくまでひとつの要素。身長を自分で変えることはできないが体重や、喫煙、飲酒、運動などの生活習慣は自分でコントロールすることができる」。一方、背の高い人もリスクのひとつは減るが、それだけで安心というわけではないと注意している。(c)AFP