【3月9日 AFP】オーストラリアの研究者らがこれまでに知られている5つの味覚、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」に加えて、第6の味覚「脂(あぶら)味」が存在する可能性があるとの論文を発表した。人間がポテトチップやチョコレートケーキなど脂質を多く含む食べ物を好む理由はここにあるのかもしれない。

 オーストラリアのディーキン大学(Deakin University)、アデレード大学(University of Adelaide)、ニュージーランドのマッセイ大学(Massey University)、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の共同研究で、研究者らは30人の被験者に溶液に溶かした複数の脂肪酸の味を感じるか調べる実験を行った。その結果、味を感じる濃度に違いはあったものの、全員が「脂味」を感じることができた。

 次に、被験者50人を対象に「脂味」に対する感度の違いを調べる実験を行ったところ、「脂味」を感じる敏感さは体重と関連していることが分かったという。この結果は肥満対策に活用できる可能性がある。

 研究を主導したディーキン大のラッセル・キースト(Russell Keast)博士はAFPに対し、「脂の味に敏感な人は、微量でも脂肪の存在を認識するため、脂の味に鈍感な人よりも結果的に脂質の摂取量が少なくなる」と説明。脂の味に敏感な人はBMI(身長と体重から算出する肥満度指数)が低いことも分かったという。

「人びとが脂っこい食べ物を好むわけは、食べる行為を中止させる(体の)メカニズムと関連していると考えられる。人間の体は十分に食べ物を摂取したと感じれば、食べることを止める信号を出して知らせるようにできている。この感覚が鈍ければ、食べることを止めさせる信号は送られない」(キースト博士)

 脂肪を含む食品は人びとのまわりにあふれ、大量に消費されている。このため、人びとが「脂の味」に鈍感になっていき、高カロリー食品の摂取量が増える可能性もあるとキースト博士は指摘する。

 「脂味」が味覚と認められるには、口にある味覚細胞に受容体があることを証明する必要がある。今回の研究はそれには至っていないが、キースト博士は「脂味」の存在を支持する証拠は続々と見つかっているとしている。論文は英医学誌「British Journal of Nutrition」に掲載された。(c)AFP