【3月8日 AFP】食べ物を消化する手助けを行う腸内細菌が、正常に働かない場合にかえって肥満の原因となってしまうことがあるとする研究が、4日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。腸内細菌叢の中で不適当な種類の細菌が勢力を強めると、低レベルの炎症が起き、前糖尿病状態となって食欲が増進されるからだという。

 研究を主導した米エモリー大学(Emory University)医学部のアンドリュー・ゲワーツ(Andrew Gewirtz)氏は、「先進国で肥満が爆発的に増えているのは、何かと座りっぱなしの生活スタイルや栄養過多な食事が原因だといわれるが、過剰なカロリー摂取の背景には無規律な食習慣のほかに、食欲や代謝に関与する腸内細菌が関わっている可能性を示す結果だ」と述べた。

 研究チームは、細胞が細菌の存在を感知する手助けをするタンパク質であるトール様受容体5(TLR5)が免疫システム中で欠乏するよう遺伝操作したマウスを使って実験を行った。

 免疫システムはTLR5の欠乏した状態でも細菌を制御し続けたが、効果は正常な場合と比べて弱く、細菌構成が変化したほか、低レベルの炎症が起こり、インスリン受容体の感受性が弱まった。

 この結果、TLR5欠乏マウスは、食べるえさの量が正常なマウスより約10%増え、体重も約20%増加、メタボリックシンドロームとなったという。

 マウスのえさ摂取量を制限することで体重を減少させることは可能だったが、インスリン感受性は低下したままだった。

 この結果から、ゲワーツ氏は「一般的には2型糖尿病とインスリン抵抗性は肥満の結果であるとされているが、少なくとも一部の肥満については、インスリン抵抗性が原因で起きている可能性がある」と指摘している。(c)AFP/Mira Oberman